2024年Ethereumの大きなアップグレード EIP-4844: Proto-DankshardingにDeep Dive
レイヤー2の大幅なガスコスト削減、Dencunは2024年Q1の予定 - #114
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🤖 Research of the Day 🧬
Ethereum Developers Confirm Dencun Testnet Dates, Look To Following ‘Pectra’ Upgrade
Scroll Unveils 2024 Technical Roadmap, Aiming to Reduce Cross-Chain Costs by 50%
Incident Summary:Gamma noticed a tweet indicating an exploit implicating Algebra Finance
観測できる限りエアドロップを行うプロジェクトが増加しており、クリプトでは「エアドロップシーズン」に入っているように見えます。先月からは、XAI、Manta、Dymentionなど数え切れないほどです。
今後は、Starknet、LayerZero、zkSync、Scroll、Taikoなど多くの大型エアドロップポテンシャルが控えています。Xの投稿でも言及しましたが、RootDataというサイトで資金調達額の大きい順で一覧することができるので、参加しておきたい方は活用するのがおすすめです。
エアドロップやトレンドのキャッチアップしておきたい情報はXでも発信しています。フォローいただけると見逃しがないと思います。→ @lawrence_crypt
それでは、今回もよろしくお願いします。DIVE INTO CRYPTO!
Deep Dive
Ethereum Developers Confirm Dencun Testnet Dates, Look To Following ‘Pectra’ Upgrade
2024年の最初のACDE会議が終了しました。Dencunのテストネットの日程は、Goerliは1月17日、SepoliaとHoleskyにそれぞれ1月30日と2月7日の予定です。
Dencunでは、proto-dankshardingといわれるEIP-4844が注目されています。EIP-4844は、Ethereumの新しいトランザクション形式である「blob-carrying transactions」を導入します。このトランザクション形式は、Dankshardingで使用される形式と互換性があり、将来のシャーディング実装に向けた準備として機能するとされています。
間違いなく今年の大きな目玉になるアップグレードなので、少し詳しく解説します。
EIP-4844:proto-dankshardingとは
EIP-4844は、EthereumのスケーリングソリューションであるRollup(L2)のための技術です。
Rollupは、オフチェーンの取引データを効率的に圧縮し、Ethereumで検証することにより、安価な取引手数料を実現します。Optimistic RollupとzkRollupの2種類があり、どちらも取引データをEthereumにトランザクションを送信する必要があります。これは、データアベイラビリティの問題(data availability problems)を解決するためです。
EIP-4844は、現在のcalldataよりも安価な新しいデータ形式であるblobを導入し、この問題を緩和することを目指しています。
blobを導入する理由
Ethereumでblobという新しいデータ形式が導入される理由は、以下のようなことがあります。
最大ブロックサイズが大きくなりすぎることを防ぐ:
calldataの容量が大きいトランザクションがブロックを多く占めるとブロックサイズが大きくなり、ネットワークでの伝搬が追いつかずコンセンサスの失敗を引き起こす恐れがある。
一方、blobはブロックあたりの最大数が決まっており、ブロックサイズの過大な増加を防ぐことができる
一定期間後にデータを削除できる:
blobはEVMからアクセスできないため、コンセンサスが終わればblobは不要になることから、一定期間後に削除できる。
point evaluation precompileにより、blobの内容を効率的に証明することができる
Dankshardingとの後方互換性:
DAS(データ可用性サンプリング)との相性が良く、将来的にDASによってblobの検証が高速化される見込みがある
なお、"Point evaluation precompile"は、Ethereumで提案されている一種の機能です。これにより、blob内のデータに対して効率的にアクセスし検証することができます。特に、ゼロ知識証明(zk-SNARKs)などと組み合わせることで、データの検証を高速化しセキュリティを保ちながらコストを削減することが期待されています。
blobのFeeは独立のマーケット
blobはEVMの既存のバリデータによる手数料体系とは独立したfee marketがあります。つまり、EIP-4844導入後は2つの独立したfee marketが存在するようになります。
EIP-4844の導入により、calldataと比較してgasのコストが低下する可能性がありますが、実際は市場原理によって決定され、導入後に明らかになると思われます。EIP-4844で導入されるblobはcalldataよりも使用用途が限定的なため、特に初期段階ではcalldataよりも安価になると予想されてます。多くの予想は10分の1程度で、大胆な予想では100分の1だそうです。
KZG コミットメント
EIP-4844では、特定のプリコンパイルコントラクト(precompile contract)が導入されます。これは固定アドレスを持ち、固有の機能が実装されたコントラクトです。このプリコンパイルコントラクトは、KZG commitmentというデータ構造を用いて、blob内の特定のデータポイントの正当性を検証します。
blobの各要素は、特定の多項式を通じて表され、KZG コミットメントによって効率的に証明されます。このプリコンパイルコントラクト(point evaluation precompile)は、EVMからアクセスできないblobのデータを検証するために使用され、zk-SNARKsとの組み合わせで効率的なデータ可用性の確認が可能になると言われてます。
Dencun後のロードマップ
Dencunの次の大きなアップグレードは、Pectraといわれるアップグレードになるそうです。Verkle treesというネットワークのステートレス化を可能にするデータ構造を導入する変更です。
このアップグレードのフェーズは「The Verge」と呼ばれ、Verkle Treesを導入することでバリデータになるために必要なハードウェアの要件を減らし、ネットワークの分散化を強化するとVitalikは説明してます。
また、アップグレードが近づいてきたタイミングでEthereumのアップグレードについては解説すると思います。
リファレンス
Scroll Unveils 2024 Technical Roadmap, Aiming to Reduce Cross-Chain Costs by 50%
Scrollは、2024年のロードマップを発表しました。
ロードマップによると、以下の計画しています。
クロスチェーンコストを50%削減
EIP 1559トランザクションタイプとSHA256プリコンパイルをサポート
複数のバリデーターを追加し実装すること
分散型プルーフを実現すること
EVMの並列実行を可能にする
Scroll は今月後半にフェアなローンチ プロジェクトをいくつか立ち上げる予定を計画しているとのこと。
EVMの並列実行はかなり興味深く、Solanaのようなハイスピードな処理性能を実現したいようです。
Arbitrum Orbit Layer3 Adds Support for Custom Gas Tokens
Arbitrum Orbit Layer3がGasトークンにERC-20を追加できるようになったことを発表しました。
この機能は、Orbitチェーンが独自のトークンのユーティリティを創出するのに役立つ可能性があると思います。
一方で、L3ならまだしも、OptimismではこれまでETHではない独自トークンをガスにするフォーラムで議論が行われていますが、うまく話が進んでいないようです。
一般的なL2は、最終的にL1にトランザクションを送信することが必要でその際にはETHで支払う必要があるため、L2で独自トークンをガスに使用してしまうと、どこかのタイミングでETHに交換する必要性があります。
このため、独自トークンのユーティリティを産んでいるようで、実は永続的な大きな売り圧が発生するというジレンマがあることがボトルネックだと考えています。
そういう意味では、DYDXのようにEthereumに従う必要がないルールのAppchainを構築するってのは目的と手段が一致しているという感覚があります。
Blockchain Explorer Etherscan Officially Acquires Solscan
Etherscanが、SolanaのエクスプローラーであるSolscanに買収され統合されることになったそうです。
エクスプローラーはマネタイズがおそらく難しく、運営が困難だったと想像しています。Solanaのオンチェーン情報を一番見やすいエクスプローラーだと認識しているので、運営が継続されることが嬉しいですが、Etherscanに買収されたことでどのようにコラボレーションされるのかが気になります。
EthereumとSolana間のブリッジまで把握できるようになったり、EhterscaからSolanaのトランザクションも含めて見られるようになるのは便利かもしれません。
Incident Summary: Gamma noticed a tweet indicating an exploit implicating Algebra Finance
2024年1月4日、Gammaはセキュリティ侵害によって、約618万ドルの損失が発生したことを報告しました。
攻撃者は入金プロキシ設定の欠陥を利用してLPトークンを不正に発行したようです。この問題は、価格変動の閾値を設定する際の算術的エラーによるものが原因とされ特定が行われています。
GammaはOpenZeppelinに監査を依頼し、1〜3週間以内に資産保管庫を再開する予定で、被害を受けたユーザーには年間収益に基づいて全額補償する計画を立てているみたいです。
本日は以上です。
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