このニュースレターでは、Web3に興味のある方、Web3関連の情報収集を効率化したい方に向け、話題のプロジェクトやトピックをやさしく解説していきます。毎週水曜日朝6時に配信しておりますので、情報収集にぜひお役立てください。クリプトを楽しみながら一緒に学習していきましょう。
先日、以下のようなツイートが目に止まりました。
上記ツイートの情報が事実なら、これだとサービスが終了しても、「アクシーがSTEPNで使える」といった誤解が生まれてしまう可能性があります。
また、「左ききのエレン」という漫画を題材にNFTが販売されることになりましたが、その際に作成されたPR用の漫画に誤解を招く表現があった、ということで修正が入りました。
さらに、明示はしていませんがけんすうさんが以下のようにツイートし、新しいテクノロジーやトレンドを説明する際の、
誤解の生まれやすさ
比較的短期間で変化する表現やイメージ
について言及がありました。
現在、認識されているNFTというものが実は数ヶ月後にはNFTとして認知されるメインストリームにいない可能性だってあるのかな、と思った次第です。
どうしても新しい技術に対する理解や表現はむずかしい部分がつきまとうものなのだと思います。
そこで今回のMain Topicでは、わたしたちは、
どのようにテクノロジートレンドと向き合い、
新たなテクノロジーに触れるとき、
新たなテクノロジーを説明するとき、
どのようなことに注意していかなければいけないのか
を言語化してみたいと思います。
これはリサーチする著者のような立場だけでなく、クリプトやNFTに興味を持つ全てのひとに関わることであると思っています。
誤解を誤解のままGoogleの検索結果に量産し続ける弊害をどうしたら解決していくことができるかの糸口には、情報を発信する側だけでなく、情報を受け取る側のリテラシーが重要だと思うからです。
自戒の意味も込めて、あらためてまとめておきたいと思います。
以下、Summaryです。
Summary
クリプトのテクノロジートレンドに触れるときには、情報量が多く誤解も生まれやすいのでフレームワークにそって情報収集していくとよい
仮説をもって情報収集すれば無限にある情報から、取得すべき情報を絞ることができる。仮説のセンスは適切なパターンを選び出す行為を積み重ねることで精度が増す。
いきなり具体的な情報から説明されても、全体像が見えなくて結局なにが言いたいのかよく分からないことがあり、逆に抽象的な説明では、だから何?となることがある。具体と抽象は使い分ける。
実際にやってみた、にまさる情報はない。しかし、無理なものは無理と割り切る。
自分が理解できていない部分があるということに自覚的になることで、紋切り型の解釈による思考が硬直化することを防ぐ。
それでは、今週もよろしくお願いします。
1. Main Topic:新たなテクノロジーを説明する際の誤解やミスリーディングが起きないように注意すべきこと
前提
テクノロジーというと曖昧ですが、この記事では主にクリプトやNFT、主にWeb3といわれる分野に関わるテクノロジーを前提にしています。
著者の経験として、約1年、クリプトに関連する話題を国内外問わずにリサーチし、ブログやYouTube、Discordのコミュニティでの勉強会の主催を経験してきました。
今回の方法については、実際にあるテクノロジーをリサーチするときに使っているフレームワークのようなものです。かっちり毎回当てはめている訳ではありませんが、漫然とリサーチするよりもやりやすくなると思います。
以下、4つのポイントにまとめて解説していきます。
その①:まずはテクノロジーの概要を掴む
その②:調査方法を決めて仮説を持って調べる
その③:抽象化と具体化を使い分ける
その④:実際に利用してみた経験をできるだけ持つ
その①:まずはテクノロジーの概要を掴む
まずは全体像を掴みます。
一言でいうとどういうことか
誰の何を解決するものか
どれくらいの影響力があるか
課題はどんなところか
どのような活用例(ユースケース)があるか
類似の技術との相違点は何か
こういったことを中学生でも解るようにまとめる意識をすると、分かりやすく把握することが可能です。
たとえば、NFTを把握する場合には、トークンとはなにか?メタデータとは何か?ということをどうしてもないがしろにできないです。
しかし、この点はテックに興味のない人からするとノイズになる→「もっと分かりやすくしよう」という意識が働き、より具体的な理解を妨げる原因になっており、誤解も生まれてしまいやすいのかと想像しています。
分かりやすい解説(初心者向け解説)には、仕組み上、はしょられている事実があることを自覚的に情報取集する必要があります。
その②:調査方法を決めて仮説を持って調べる
テクノロジートレンドを調べる順番はネットから入って問題ないと思っています。
クリプトでは、
公式サイト・公式ブログ
Twitter
Discord
専門メディア・個人ブログ
専門書など
この順で、情報収集を行っています。
イメージとしては、
公式サイト・公式ブログ → 概要把握
Twitter → 最新情報の把握
専門メディア・個人ブログ → 周辺情報を広く知る
Discord → 質問したいことを聞く
専門書など →技術的な本質を体系的に学ぶ(あまりない)
上記のような使い分けをしています。
仮説を持って調べることは非常に重要だと思います。仮説とは、「〜であれば〇〇であろう」という仮の論理構成のことを指しています。やみくもに情報収集すると無限に情報はありますので、何を情報収集しないかが大切です。
仮説を立てて調べれば、その仮説に関係ないことをシャットアウトすることになるので効率的に情報を集めることができます。「〇〇であることがわかれば××である」といった情報収集するターゲットを決めていくイメージに近いです。締切のあるニュースレターでの配信ではこの考え方を使わないと、毎週まとめ上げることが難しいです。
問題は仮説設定の精度です。
これはセンスと言い換えてもいいかもしれませんが、このセンスが良ければ、そのリサーチによってまとめられた情報を有り難がる人が多くなるかもしれません。センスは生まれながらに決まっていることと、自分で向上できる部分があると著者は認識しており、後者については以下の記事が参考になるかと思います。
以下、抜粋です。
センスというのは、いろんな過去の経験からいろんなパターンを蓄積していって、年齢を重ねれば重ねるほどにそのパターンの中から適当にピックアップするが上手くなることなんです。
だから、若い人にセンスの高い人があまりいないのは、経験がないからですね。 ピックアップしてくるのが上手くなると、例えばオリジナルの作品作るにしても、まったくゼロから作ってるわけじゃなくて、どっかから持ってきてる。そうやって、ゼロからイチを生んだように見せてるんですよ。
だから、センスはあとでもどんどん伸びるのです。
この記事を読み、センスは天賦の才能とは割り切らない言語化能力に驚きました。上記定義にあてはめ、これらの能力を高める意識を持ってリサーチすると良いかと思います。
その③:抽象化と具体化を使い分ける
テクノロジーはコンピュータが処理していたりするので、目に見えない場合が多いです。物理的に触ったりできない仕組みを理解するには、抽象的と具体的な表現を使い分けると理解がしやすくなると思っています。
たとえば、
ブログに投げ銭するとポイントが貯まります
このポイントはDAOの投票権になっています
コミュニティへの貢献が投げ銭と投票権の獲得につながります
これらの情報は、抽象的な情報です。仕組みの全体像を把握するためには、抽象的に説明した方がわかりやすいです。
一方、上記の3点に関連させた具体的な情報とは、
投げ銭とはだれが何をする行為で、どのようなポイントが貯まるのか
ポイントはなぜ投票権になっていて、どういう意味があるのか
コミュニティの貢献にはどういう行為が該当し、なぜ貢献が投げ銭と投票権の獲得になるのか
これらが具体的な情報です。抽象的な情報から「つまりどういうことか」と粒度を細かくした情報をさしています。
いきなり具体的な情報から説明されても、全体像が見えなくて結局なにが言いたいのかよく分からないということがよくあります。逆に抽象的な説明では、だから何?となることがあるかと思います。
これらの情報を使い分け、適切なタイミングで内容をまとめると、薄っぺらい情報となりにくくなると思います。
その④:実際に利用してみた経験をできるだけ持つ
実際に利用したことがない場合、そのサービスの表面的な情報を得ることしかできておらず、利用者にしかわからない使いにくさといった課題は見えてきません。
NFTは非代替性トークンであり…といった紋切り型の理解しかできなくなり、思考が硬直化します。NFTはこういった仕組みだから、こうであるはずだ、という固定概念もこうした「思考の硬直化」によるものだと思います。
たとえば、取引所に口座開設して、ETHを購入し、MetaMaskをインストールしないと、GOXの危険性を実感することはできません。コピペミスやネットワークの選び違いで、かんたんに資金が失われる恐怖を感じることができるのは実際に触ったひとだけでしょう。
とはいえ、Ethereumクライアントを立てたり、フルオンチェーンのNFTを作ったり、実際に手を付けるには、その前提として知識を吸収する時間と労力が必要になるケースもあります。こういった場合は、必要に応じて割り切ります。
繰り返しになりますが、理解できていない部分に自覚的になることで誤解が生まれる原因である思考が硬直してしまうことを防ぐことができるのだと思います。
参考記事の紹介
以下、Main Topicを書くにあたって参考にした記事を紹介です
meganさんが書かれたブログ。かなりかっちりとした実務に即した内容です。おすすめです。
猫井ゆうなさんのブログ。TV放映されたメタバースに関連する情報に、どのような問題点があったか、丁寧に指摘しています。
ややメタ的ですが、この粒度で情報の取捨選択すること、冷静に情報を整理する姿勢が参考になる記事です。
本日のMain Topicは以上となります。
もし、「わかりやすい」、「ここが面白かった」といった感想がありましたらコメントやTwitterでシェアして教えていただけたらありがたいです。より良いニュースレターにしていくために参考にさせていただけたら嬉しい限りです。
2. Web3 Topics
今週までに気になったWeb3トピックをシェアしていきます。
1.Ethereum Push Notification Service Raises $10.1 Million in Series A
EthereumでのスマホやChromeブラウザへのプッシュ通知を実現するプロトコルのEthereum Push Notification Service (EPNS)が$10.1MのシリーズAで資金調達を行いました。
投資家には、Tiger Global, ParaFi, Polygon Studios, Harmony Foundation, Wave Capital,エンジェル投資家としては1inch Exchange co-founder Anton Bukovも含まれます。
EPNSの登録を行えば、Web3プラットフォームからの通知をオンチェーンでもオフチェーンでも受け取ることができ、トークンの価格変動、DeFiでのトレード発生、NFTの入札なども可能です。
2.Q1 2022 Cryptocurrency Report
コインゲッコーのQ12022のレポートです。クリプトマーケットの動向を概観するのに最適な無料のレポートです。
上位5つのステーブルコインの時価総額は13%増加。トップ5の順番は2021年以降は変更なし。USTは最も強い伸びを示したが、絶対的な時価総額ではUSDCが最も大きくなっています。
ETH価格が下落していたものの、コンセンサスレイヤー(PoS)の総ステークドETHは2022年第1四半期に上昇。3月14日のKilnテストネット成功により、ステイクされたETHが急増しています。2022年第1四半期末には11M ETHとなり、これはETH供給総量の9%に相当します。Kraken(9.4%)とLido(8.8%)はバリデータ数で依然としてトップ2のETHステーキングサービスであり、合計で約18%の支配力を持ち、群を抜いています。
マージは1日のETH排出量を12,000ETHから1,280ETHに減らすと推定され、これはビットコイン換算で3倍の半減に相当する90%の削減量に。
3.イーサリアム「The Merge」はスケーリング問題を解決しない──注目されるレイヤー2の役割
EthereumのThe Mergeが2022年の後半まで延期されました。サーバーの処理を並列化して高速処理化させるシャーディングという仕組みを取り入れることも同時に先延ばしとなったことから、スケーラビリティの解決策にレイヤー2ソリューションへの注目がさらに高まっています。
レイヤー2ソリューションにはArbitrum、Optimism、ZkRollupなど色々な仕組みが開発されていますが、おおよそのイメージは、「面倒な処理はL2側で、トランザクションの結果といった重要な情報の記録をメインネットに行いセキュリティを維持する」といったものです。
記事中では、ユーザーが増加していけば、トランザクション量が増加していくので、スケーラビリティはいたちごっこになりがちであることが指摘されています。これらの解決策としてL2には引き続き注目されていくものと考えています。
4.How Blockchain Bridges Became Hackers’ Prime Targets
AxieのRoninブリッジで大きな不正出金があったことに関連し、なぜブリッジが狙われたのか、の経緯が分かりやすく紹介されていました。
仕組み上、コントラクトにロックするものといった狙われやすい場合があります。インターオペラビリティ(相互運用性)の高いブロックチェーンが求められる理由がわかります。
3. Weekly Podcasts
今週までのポッドキャストをご紹介します。気になるタイトルがありましたら、ぜひクリックして聞いてみてください。
1.#450 TweetするためにNFTを購入しなければいけないDAO TweetDAOは新たなミームとなるか若干の期待を込めてとりあげました。ツイートするためにはNFTを購入しなければならず、NFTの金額は徐々に上がっていく仕組みです。
購入したNFTの価格上昇を見込み、さらにツイートで人を集めるといった仕組みがevilなビジネスに見えなくもないので、長続きするようなものではないでしょう。
2.#451 Web3・NFTの概念は理解しないけど使うのが一般になりそう
Web3やNFTといったむずかしい概念は理解しなくとも使う人がたくさん現れるというのがもしかしたら普通の光景になるのかも、と想像した話をしています。
ちょうどTCP・IPの仕組みは知らないけど、インターネットは使っているという状況に近いのではないでしょうか。
3.#452 ⛹️♀️Web3はスラムダンク🏀だと思う理由
前回のニュースレターについて、口頭での補足をしてみました。週刊少年ジャンプを読んで来たかたにとっては共感できるところがきっとあるはず。
開発運営者が売上利益を総取りしてきたこれまでのWebサービスと違い、運営者もコミュニティの一員となり方針を決定していくことがブロックチェーンによるトークン発行により可能になったことを取り上げ、コミュニティがプロダクトを運営していく上での課題について掘り下げています。
詳しくは記事をご覧いただくと解決策までの検討をしております。ぜひご覧いただけたら嬉しい限りです。
参考記事:【Web3はスラムダンク🏀】コミュニティでプロダクトを所有することの現状と課題と解決策
最後までお読みいただきありがとうございました。
急速に円安が進んでいますね。アメリカの利上げは段階的に継続されていく予定ですし、日本の金利は現状維持のようです。このままいけば円安はさらに拡大していきそうです。まだ具体的なイメージがわきませんが、1ドル=200円までいくのにそこまで時間はかからないかも知れません。その前に何か手が打たれる可能性はありますが。
こうしたニュースが身近になると、アセットとしてBTCを注目するのは自然な流れだと思います。国家間の事情よりも、パブリックブロックチェーンと市場の需要と供給にのみ左右されるBTCやETHなどはポートフォリオのひとつとして真面目に検討されていいと思っています。
ここにNFTが入ってくるかどうかはまだ分からないと思っています。今回のMain Topicで紹介したように、この認識も数ヶ月後には変化しているのかも知れません。
自民党がWeb3・NFTを国家戦略とする案を検討しています。日本経済を復活させるのはWeb3なのか、気になるところです。引き続き楽しみながら日々のニュースをリサーチしていきたいと思います。
それでは、また。
以下の「Subscribe」をクリックすると毎週水曜日朝6時にメールでこのコンテンツが届きます。情報収集にお役立てください⚡️🎧
「いいね」と思っていただいた方は、ぜひ♡のクリック、コメント、Twitterでのシェアをお願いします!通知を確認したらリツイートさせていだきます。
バックナンバーはこちらからご覧いただけます。
⚡️Twitter:@LawrenceTokyo
🎧Podcast:Start-up Crypto Channel
🚀Discord:Crypto University