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おはようございます!本日もクリプトメルマガをお届けいたします。今回は、Account Abstraction(いわゆるAA)についてです。先日に以下のようなツイートを発見しました。
意訳すると、ツイートを引用し「Account AbstractionはLiveになっておらず、ERC-4337が利用できるようになっただけですよ」と言っています。
そこで、「Account AbstractionがEthereumで実装されたという誤解」がもしかすると広まってしまう可能性がありそうと考え、ぼく自身も前提知識を整理しておきたいと思ったので、今回はERC-4337をゆるく深堀りしていきたいと思います。
Main Topic:👛 Account AbstractionとERC-4337を区別する①
Account Abstractionを知る意義
念の為、Account Abstractionをなぜいま知っておくのが望ましいのかを確認しておきます。
それは端的には、ユーザーを複雑なシードフレーズを気にしたりウォレットを設定する技術的なプロセスを理解したりすることなく、クリプトの世界にオンボーディングさせることができるから、でしょう。Account Abstractionは、数億人のユーザーをクリプトへアダプションさせるための重要なステップであるといわれます。
さらに、現在よりも自由度の高いウォレットにおけるユーザー体験を設計することが可能となることも魅力だといわれています。
ただし、Account Abstractionという概念の理解も専門的知識を要し、実装も難しいといわれます。そこで出てきたのがERC-4337です。それらの関係性を今回は見ていきましょう。
”Account Abstraction”と”ERC-4337”の区別
Account Abstractionは2015年頃から構想が行われているものですが、プロトコルレベルでアカウントを抽象化するもの(アカウントでスマートコントラクトを扱えるようにする)です。これはプロトコルにハードフォークが必要で、The Mergeなどを控えた当時のEthereumのロードマップにおいて実現するのは困難でした。そこで提案されたのがERC-4337です。
ERC-4337は、Ethereum Foundationのアカウント抽象化(Account Abstraction)をプロトコルに変更を及ぼさずに実現しようとする規格です。2023年3月に行われたWalletConでEthereumのメインネットで利用できるようになったことが発表されました。
重要なことは、今回、Ethereumのメインネットで利用できるようになったのはあくまでERC-4337であり、元々構想されていたAccount Abstractionがメインネットで実現されたわけではないです。
ERCは皆さんがよく目にするトークン規格のERC-20やERC-721と同じERCです。ERCはトークンやアプリケーション、コントラクトの標準規格や規約が定められたものです。よくEthereumの変更はEIPと呼ばれますが、上記のような違いがあります。
ユーザーは、スマートコントラクトのウォレットである”スマートアカウント”を扱えるようになるような規格となります。スマートアカウントでは、例えば一定以上の支払いに2要素認証を追加することや、複数人の署名があったときだけ署名を有効にするといった仕組みを利用できるようになることです。
また、原則的にユーザーは秘密鍵から作成されるシードフレーズ(12〜24の英単語)を管理しており、これを紛失したり他人に奪われること=即資産のコントロールを失う事を意味しますが、こういった管理をする手間を削減できるだけでなく、信頼を置いた人間に対してリカバリーを委託しておくことも可能となります。
ArgentやGnosisが既に実現している?
ERC-4337が実現しようとしていることは、既にArgentウォレットでスマートアカウントのように秘密鍵の管理を不要にしたり、ソーシャルリカバリが実装されています。Gnosisでは複数人によるマルチシグウォレットでは複数人の署名でトランザクションを送信するといったことができます。
しかし、これらを利用するためには中央管理されたリレーヤーに接続して通信する必要があり、これに接続できなくなるとユーザーはアカウントにアクセスできなくなるといった問題が存在しています。
EthereumのERC-4337では、バンドラーと呼ばれる分散型のインフラを導入していきます。最初は集権的に運営されることが予想されますが、将来的な分散化を目指していくでしょう。バンドラーは、マイナーやバリデーターと同じようなものですが、ユーザーオペレーションを受け取ってトランザクションを作成します。
バンドラーが必要とするガス代は、ユーザーのコントラクトアカウントか、ペイマスターという第三者による支払いによって補償されます。
今回は以上です。最後までお読みいただきありがとうございます。
次回は、
ERC-4337の仕組み(バンドラーの役割など)
ERC-4337が実現する近い未来像
今後の展望と懸念事項
ついて書きたいと思います。
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後編はこちらから。
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