このニュースレターでは、Web3に興味のある方、Web3関連の情報収集を効率化したい方に向け、話題のプロジェクトやトピックをやさしく解説していきます。毎週水曜日朝6時に配信しておりますので、情報収集にぜひお役立てください。クリプトを楽しみながら一緒に学習していきましょう。
ニュースレターの配信が遅れてしまいました。いつも楽しみにしてくださっている方にご不便をおかけして申し訳ありません。現状の報告につきましては、最後にまとめておきます。
今回は、「情報の永続性を持続可能に」というキャッチフレーズのArweaveについて紹介します。
前回のニュースレターはこちらです。
以下、Main TopicのSummaryです。
Summary
Arweaveとは、永続的なデータストレージを必要とする人々と、ディスクスペースに余裕を持つ人々の需要を満たすような仕組みを提供するネットワークのことで、かんたんにいうと、「使われていないサーバーを有効活用させるためにインセンティブを与えて持続可能にする」というもの
Arweaveがどれくらいの期間、ユーザーのデータを保証できるのかといえば、現時点で200年以上を想定しているようです。これまでのサービスが保証しようとしている、たかだか数十年と比較すれば驚異的な期間である
メタデータの一部がオフチェーンに保存されているNFTの情報の完全性・可用性は、*相対的*に信頼性が低いです。コンテンツ情報をメインとするNFTなら、サーバーの階層が変更されたり、サーバー自体がオフラインになった時にはアセットとしての価値を維持することがむずかしいことになるから
コンテンツ重視のNFTから、メタバースなど、よりコミュニティにユースケースを委ねたNFTが扱われるのがポピュラーになるとしても、情報が突如消えてしまうのは重要な問題であり、この分野は今後も注目していくべき。しかし、理論通りに情報を保存できるのかどうかはわからない
それでは、今週もよろしくお願いします!
Main Topic:⌛️📙情報の永続性を持続可能にするArweave
前提
Arweaveの概要に入る前に、なぜ情報の永続性に価値があるのか、という点を整理しておきます。
まずは一般的なWebページが表示されるまでの流れを確認しておきます。
普段私たちが利用しているブログサービスなどのWebページが利用できるのは、企業が運営管理しているサーバーに、Webページのファイルが保存されているからです。
このWebページを閲覧したいときはURLを指定して、サーバーに対して「このページを表示してください」というリクエストをブラウザ(GoogleChromeやSafariなど)で行います。
リクエストを受け取ったWebサーバーはリクエストされたURLに保存された階層に入っているWebページのファイルをレスポンスして、ブラウザがWebページのソースコードを読み込み、画面を生成している、というのが一般的なWebページが表示される流れです。
つまり、このサーバーに保存されているWebページを構成するファイルが書き換えられてしまうと、同じURLなのに全然見た目が異なるページにアクセスさせる(させられる)ことも可能なのです。
Webページを見ていて404 Not Found という表示に出会ったことがある人はいらっしゃるはずです。
404 Not Foundとは、すでに削除されたページや間違ったURLにアクセスした場合に表示されるエラーです。
Arweaveの利用価値
NFTは、所有者のウォレットや取引情報がオンチェーンに記録されていますが、一般的なNFTでは画像データなどはデータ量が大きくオンチェーンに保存するとガス代のコストが高くなるといった問題があり、オフチェーンに保存されます。
あまり議論されることはありませんが、オンチェーンに保存されていない画像データは、サーバー管理者により改ざん(データの入れ替え)をすることが可能です。
この原因は、ブロックチェーンに画像データなどが保存されているわけではなく、リンクを辿った先のサーバーの階層にデータが保存されているからです。この理屈は先に説明したWebページがサーバーの管理者により書き換えが可能である例と少し似ています。
Arweaveなどの分散型ストレージは、サーバー管理者の都合だけでファイルの保存先を変更されてしまったり、どこかひとつのサーバーに保管されておりそこの情報が削除されたらこの世からデータが消えてしまう(永続性がない)といったことを防ぐデータの管理方法ということになります。
上記画像はマーケットプレイスによって表示される画像が異なるNFTです。自分のウォレットの中では💩の絵文字が表示されるという仕掛けがされています。これは画像出典の記事著者がユーモアで作ったものですが、後日、OpenSeaからこのNFTは削除されました。
このように、購入したときとは別の画像が表示されてしまったり、URLの階層に別のイメージを保存されることは可能です。ノードがオフラインになってしまったりするとデータが失われるリスクのある場合、NFTをデジタルグラフィックとして楽しんでいるユーザーにとっては無価値のものに変わってしまいます。
こういった状況を防ぐのがArweaveの基本的な利用価値だと思います。
以下では、Arweaveを概観していきます。
Arweaveとは
Arweaveとは、永続的なデータストレージを必要とする人々と、ディスクスペースに余裕を持つ人々の需要を満たすような仕組みを提供するネットワークです。なお、Arweaveはブロックチェーンのようなデータ構造を利用してセキュアとサステナブルを実現します。
特徴としては、マイナーがデータを保存する役割を担うことで報酬を受け取れるような経済合理性が組み込まれている点です。長期間に渡って情報を求めるユーザーへ情報の保存という価値を提供し、要求に応じて新しいデータを保存することで収益を分配してネットワークを維持しています。
かんたんにいうと、「使われていないサーバーを有効活用させることにトークン発行などによってインセンティブを与えて持続可能にする」というものです。サーバーを自社で管理していたりする場合でも、フル稼働させておくことはあまりないものです。以下の画像がイメージです。
2020年3月には、Andreessen Horowitz、Union Square Ventures、およびCoinbaseVenturesからさらに830万ドルの資金を調達を行っています。
データの永続性
実際にArweaveがどれくらいの期間、ユーザーのデータを保証できるのかといえば、現時点で200年以上を想定しているようです。これまでのサービスが保証しようとしている、たかだか数十年と比較すれば驚異的な期間であると思います。ちなみに日本企業の平均寿命は23.8年だそうです。
ユーザーは、データの保存を行うための料金の元本分を最初に前払します。永続性をうたっていますがサブスクリプションモデルはないところが非常に興味深く、重要なポイントです。
Arweaveのイエローペーパーによれば、HDDに保存するための技術的な単価は過去数十年から減少している事実から、「将来的なデータ量あたりのストレージ維持コストは低下していく」ということを前提にし、元本分を試算します。
データを永続的に保存したいユーザーから徴収した「前払の元本分」から利息分を計算し、マイナーに対する報酬を支払っていく仕組みなので、「分配する資源が枯渇しない」という理屈のようです。ざっくりとした解説なのでぼくの文章では信憑性に欠けますが、詳細に興味がある方は、イエローペーパーをご確認いただくといいかと思います。
PermaWebの特徴
Arweaveでは、Arweaveをネットワークレイヤーとし、Webレイヤーのことを「PermaWeb」と読んでいます。これは普通のWebと何ら変わりなく、世界中どこからでもアクセスすることができ、あらゆるアプリや画像、ビデオなどの情報を保存することができます。これに加えて情報が消失することを防ぐ効果が与えられています。
しかし、逆にいうと一度転送された情報は誰にも削除したり、変更したりすることができません。つまり、個人情報やセンシティヴな情報がアップされてしまった場合、永遠に残り続けてしまうという問題があります。
違法な情報などがアップロードされていないか、についてはネットワークへのスキャンとフィルタリングを行うモデレート機能があり、ネットワークの維持については、民主的なプロセスで開発者とコミュニティが慎重に取り扱うこととしており、連絡用のメールアドレスが用意されています。現状では、コミュニティによるDAOが組成され、運営されています。
永続的なNFTのためのストレージ
前提の部分でも触れましたが、メタデータの一部がオフチェーンに保存されているNFTの情報の完全性・可用性は、相対的に信頼が低いです。(情報の信頼が低いことと、価格が低いことは必ずしも一致しないことに留意してください。)
コンテンツ情報をメインとするNFTなら、サーバーの階層が変更されたり、サーバー自体がオフラインになった時にはアセットとしての価値を維持することがむずかしいことになります。
以下のサイトでは、自分が所有しているNFTの永続的なストレージの観点から安全性を確認できるサイトです。
Arweaveを使用すれば、ミントしたNFTのメタデータの保存先を永続的に確保するメカニズムを利用して、コンテンツを安全に保存することができます。
Arweaveのコンセンサアルゴリズムは、SPoRA:Succinct Proof of Random Accessというものが用いられており、マイナーが新しいブロックを追加するためには、古いデータへのアクセス証明をする必要があります。古いデータへのアクセス証明をコンセンサスアルゴリズムに求めることで、古い情報が消失されることを防いでいます。
以下、実際にArweaveが利用されている例を紹介します。
Kevin Abosch
ブロックチェーンアートのパイオニアと言われるKevin AboschというNFTアーティストは、OpenSeaでリリースした「1111」というNFTシリーズはEthereumに展開され、メタデータはArweaveに保存されました。
Arweaveは、Kevin氏の作品をOpenSeaがアクセスできなくなろうとも、自分のアートワークを永久に保存することを可能にしています。なお、OpenSeaでもオプション機能としてIPFSという分散型ストレージプロトコルを選択することができるようになっているようです。
ASTΞROIÐ
Astar NetworkのASTΞROIÐという分散型CMSでは、ブログをASTΞROIÐのサーバーに保存することも可能ですが、Arweaveに記事をアップして情報を永続的に保存することができ、投げ銭だけでなくASTΞROIÐのプロトコルからの報酬をもらうことができるようになります。
クリプトに興味がある方はぜひ試しに利用してみると良いかと思います。ぼくは英語で情報発信する際のプラットフォームとして利用しています。ちなみに、.astrのNFTを取得していればマイページのURLを独自ドメインとして設定することができます。
総括
今回のMain Topicでは、Arweaveという分散型のデータストレージネットワークについて概観しました。データをインターネット上に保存することにどういう価値があるのか、という点は「NFT」という文脈から考えるとわかりやすくなるのではないかと思います。
コンテンツ重視のNFTから、メタバースなど、よりコミュニティにユースケースを委ねたNFTが扱われるのがポピュラーになるとしても、情報が突如消えてしまうのは重要な問題であり、分散型ストレージの分野は今後も注目していくべきであると思っています。しかし、理論通りに情報を保存できるのかどうかはわかりません。
とはいえ、Arweaveはインフラとしてさまざまなプロジェクトに取り込まれる汎用的なプロトコルとして活躍の機会が増えていくのではないか、と考えています。
本日のMain Topicは以上です。
🔗参考記事
Filecoin, But Forever: Arweave Raises $5 Million to Build Out 'Permaweb'
Announcing the first community-run Arweave ecosystem fund DAO
最後までお読みいただきありがとうございました。
2週間ほどニュースレターをお届けできず楽しみにしていただいていた読者のみなさま、お待たせいたしました。引き続きご購読いただきありがとうございます。
現状につきましては、本業が非常に繁忙期となり生活リズムが崩れたことで、執筆時間を作ることができなかったことが大きな理由です。繁忙期はしばらく続きそうなので、不定期になってしまいそうなのですが、引き続きよろしくお願い申し上げます。
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クリプトに対する情熱やワクワクはまだまだございますので、みなさまに役立つ情報をお届けできるようにリサーチをしていきたいと思います!
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