Astar Networkから「Astar zkEVM」が発表された。
SNS上では、発表を歓迎する声もありつつ、一方で疑問を投げかける投稿も見かけられた。
そこで今回は、まずAstar zkEVMが何を目指しているのか、既存のAstar Networkはどうなるのか、について概要を理解しながら考察したいと思う。
前提として、Astar Networkの概要・仕組みについては以下の記事で解説しているので参考にしてほしい。
Xの反応だけを見ていると、どうしても主観による否定的な意見や過度に賛成する大きな声に翻弄されがちだ。この記事ではそういった情報から一歩引いた目線で検討を行いたい。
結論からいえば、Astar zkEVMは「現状のAstar Networkを救うための打開策であり新しい挑戦」なのだとは思う。なぜ、Astar Networkを救う一手だと言えるのか?
それはAstar zkEVMが目指す狙いを知ることで、理解できるはずだ。
それでは本日もよろしくお願いします。DIVE INTO CRYPTO!
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🧵Contents
Astar zkEVMの概要
Astar zkEVMの特徴
そもそもzkEVMとは
Astar zkEVMが目指す狙い
Astar Networkの現状
Polkadotから離れる訳ではなく、むしろ逆
Astar zkEVMによってAstarエコシステムにもたらされるメリット
考察と所感:Astar zkEVMからAstar Networkへの逆回転
Astar zkEVMの概要
Astar zkEVMについては、ドキュメントが一番詳しく載っている。以下、ドキュメントのFAQを参考にしながら要点をまとめる。
🟣Astar zkEVMの特徴
Astar zkEVMとは、Ethereumレイヤー2として立ち上げられたzk-Rollupであり、EVM実行対応環境のことだ。Polygon CDKというチェーン開発キットによって構築されている。
zkEVMは、既存のEVM対応したアプリケーションや開発環境をそのまま利用することができるため、オンボーディングがスムーズである特徴を備えている。
特徴は、スケーラビリティの向上、Ethereumによるセキュリティ、EVM 同等性(Equivalence)を実現する点だ。zkEVMチェーンは、Polygon、Scroll、Taikoなど既に群雄割拠の状態だ。
FAQから、Astar zkEVMのユニークだと言われる点を調べてみたが、差別化ポイントとしては、
Astar Networkとの相互運用性
日本市場とグローバルなプロジェクト、企業、開発者の橋渡しをする
以上の2点だと考えられる。
Astar zkEVMのガスはETHである。
また、ドキュメントには、Astar zkEVMはPolygon Labsと協力して、日本市場に焦点を当てると明記されている。日本向けのさまざまな dApp 開発者やエンタープライズ ソリューションの多様なニーズを満たすつもりのようだ。
テストネットは2023年10月以降としている。
🤔そもそもzkEVMとは
zkEVMは、その名の通りEthereum Virtual Machine(EVM) とゼロ知識証明(ZKP) という2つの技術を結びつけた環境であり仕組みは難解だ。
zkEVMにはいくつかのタイプ分けがヴィタリクによって行われている。その目的は、Ethereumとの互換性の程度によって区分されている。
この枠組みで考えると、Astar zkEVMはPolygon CDKによるものだとするならばタイプ3に属すると思われる。Astar zkEVMの処理の流れは以下の通り。
(ドキュメントの要約の抜粋)
ユーザーはメタマスク等のウォレットでトランザクションを開始し、シーケンサーに送信
シーケンサーが処理をコミットすると、Astar zkEVM上でトランザクションは確定(Trusted Stateと呼ばれる)
シーケンサーはイーサリアムのスマートコントラクトにバッチデータを送信、仮想状態が生成
アグリゲーターが保留中のトランザクションを収集・検証し、イーサリアムでの確認のためのプルーフを作成
プルーフ検証により、イーサリアムのファイナリティ(統合状態)が達成される
EVM同等性にもレベルがあると理解すれば良いが、今回の話題とは関係ないので割愛します。質問などはコメントでお待ちしています。
Astar zkEVMが目指す狙い
本題である。Astar zkEVMがローンチされる狙いを検討しよう。まずは現状理解から進める。
⭐️Astar Networkの現状
まず、現状のAstar Networkは正直、難しい局面を迎えていると思う。
ただでさえ、DeFi・NFTを取り巻く環境は弱気相場で地合いが悪い。直近ではTVLは減少が続いているし、特に新しいdAppsが急成長を見せている訳では無い。
しかし一方で、開発者のコミットや開発者の数はあまり減少していないように見える。これは開発者コミュニティを重視するAstar Networkコミュニティの特性やこれまでの取り組みが反映されていると思う。
つまり、コミュニティは持続的な発展をしてきたが、今後Astar Networkが目指すビジョン達成には、相場の回復だけでなく新たな打開策が必要だと思われる。
それがAstar 2.0と第されるビジョンだが、そのひとつが今回のAstar zkEVMである。
👉Polkadotから離れる訳ではなく、むしろ逆
Astar NetworkとAstar zkEVMは相互運用性を持たせるとされている。おそらくだがAstar zkEVM<>Astar Networkの資産の回遊性をLayerZeroによって実現する。
Astar Networkは、とにかくdAppsステーキングに参加する開発者とユーザーを増やしたいはず。それでこそエコシステムは持続可能になるからだ。
そこで、Astar zkEVMを起爆剤に使う。zkEVM環境であれば既存のTier 1アプリケーション(おそらくUniswapやAaveなどのことを指していると思われる)が参入することを見込めるからだ。
これによって、資金がグローバルからもzkEVMに集まりやすくなる。この恩恵をAstar Networkに還元する、これがAstar zkEVMがAstarエコシステムにもたらすメリットであり狙いだ。
🔥Astar zkEVMによってAstarエコシステムにもたらされるメリット
上記のような恩恵をエコシステムにもたらすだけではない。
Astar zkEVMが、ASTRトークンホルダーに対してどのような価値を提供するのか見てみよう。
以下の図に概要がまとまっている。
以下の3点が挙げられている。
シーケンサー収入をもとにASTRの買い戻しとバーン
ASTRをネットワーク アグリゲーターへのインセンティブ付きトークンにしてバーン(詳細不明)
ASTRをメタトランザクション、Account Abstraction、Relayersなどのガス代として消費する
以上のような用途でASTRを市場から引き上げてバーンすることでASTR価格を支える。シーケンサーとは、Astar zkEVMに送信されるトランザクションの順序を決定しブロック構築の役割を果たすエンティティだ。
Astar zkEVM上のトランザクションガスコストは、原則的にシーケンサーに支払われる。
したがって、Astar zkEVMが利用されればされるほど、シーケンサー収入は増加し、ASTRトークンの買い戻し&バーンを行う原資が集まることになる。
考察と所感:Astar zkEVMからAstar Networkへの逆回転
おそらくだが、Astar zkEVMは、CoinbaseのEthereumレイヤー2であるBaseのような立ち回り・ポジションを目指しているのかも知れない。
Baseは、グローバルからTier 1のアプリケーションを呼び込むことに成功している。これはマーケティングに優れていたからという点もあるが、Coinbase Venturesなどの投資が見込まれる、クリプトでもまだ金の匂いのする領域だからだ。
もちろん、Astar zkEVMが置かれている環境はBaseと全く異なる。そのため、全く同じようなポジションということはあり得ないが、簡単にいえばBase日本版のようなポジションを世界に広げたいのかも知れない。
しかし、Tier 1プロジェクトがすぐにAstar zkEVMに参入するかは分からない。なぜなら、zkEVM関連のチェーンはテストネット段階のプロジェクトが非常に多く、パブリックローンチによって先行者優位を取られる可能性があるからだ。
その点、Astar zkEVMは「日本(日本の大企業)」をターゲットにしているので、大きな企業をAstar zkEVMに呼び込むことができれば、グローバルに対してAstar zkEVMの優位性を示すことができるかもしれない。
つまり、日本の大企業を動かせるかどうかが鍵となっていると思われる。渡辺さんは日本の税制さえも自民党と協力して変革して来たし、大企業とのコネクションも強いと思うので期待したいと思う。
Astar zkEVMは、インフラレイヤーである。したがって、そこに乗るアプリケーションに価値が集まることが重要だ。この目的のために、水面下で日本の大企業との交渉が始まっているかも知れない。
本日は以上です。
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基本的な質問で失礼します。シーケンサーというものの役割がわかりません。このあたりは、何をどう勉強すれば、理解できるようになるでしょうか?