この記事は Ethereum Advent Calendar 2022 の5日目です。
トピック
DeFi、NFTなどの関連ニュースの一覧
BitcoinとEthereumを含むWeb3やクリプトの比較
Ethereumのブロック生成レベルでの検閲大勢の議論
大きく以上の点について書いております。
このニュースレターでは、Web3関連の情報収集を効率化したい方に向け、話題のプロジェクトやトピックをやさしく解説していきます。情報収集にぜひお役立てください。
Web3 Topics
今日までに、ぼくの目にとまったWeb3関連のトピックをジャンルごとに一覧で掲載します。解説やコメントを加えるものに「★」をつけています。
💵 Fundings:
🥇 Bitcoin:
🏦 DeFi:
⛓ Layers:
🎟 NFTs:
🧵 Tweets:
📰 Readings:
Paradigm Accused Of Copying Code For Rust-Based Ethereum Client
Jack Dorsey's TBD Is Looking to Trademark 'Web5' to Deter Its Misuse
👔 Enterprises:
⚔️ Regulations:
以下では、「Bitcoinの存在感とEthereumのブロック生成レベルでの検閲耐性への懸念の議論」として、2点を軸にまとめます。
1. ビットコインとクリプト/web3はもう完全に別物です【FTX事件からの教訓】
Bitcoinとその他のクリプトやWeb3といわれる分野を明確に区別すべきであるという主張の記事です。現在のWeb3に対する課題を指摘しており、特に違和感を感じず読むことができましたので、少し長くなりますが、以下に抜粋します。
ビットコインを除くクリプトの本質を一言で言ってしまえば、それは独自トークンの発行…多数の独自トークンの発行や売買がサービス設計や収益性の前提になっている
長期的にプロジェクトが成功すればトークンの価格は上昇し、初期の支援者も経済的リターンを得られ、有望なプロジェクトが多数立ち上がる。これがクリプトの世界の理想のサイクル
しかしその一方で、独自トークンの発行は発行主体や少数の人間への信頼を再導入し、トークン売却による短期的な利益や爆発的な成長、高い利率などと引き換えに、ビットコインの革新であったはずの分散性や検閲耐性を損う
トークン発行は開発チームや周辺のVCやファンドなどの一部の有利なインサイダーを生み出し、リスクは一般投資家に転嫁されるような構造になりがち
証券認定に伴うコンプラ対応負担の増加なども考えると、独自トークンを持つクリプトプロジェクトの多くが事実上の撤退を余儀なくされる
規制や特定のトランザクションなどの検閲リスクは独自トークンやウォレットなどの個別のプロジェクトだけではなく、イーサリアムなどのLayer1チェーンのプロトコルレベルにも及ぶ可能性
イーサリアムのProof of Stakeのブロック生成レベルで、OFACコンプラ準拠をした、つまり検閲を実行しているブロックの割合が過半以上まで増えているという現象がすでに起きている
投資家にとってはこれはビットコインとクリプトで、長期的な価格のトレンドが変わってくることを意味するかもしれないですし、起業家や関連企業にとっては規制リスクの差、また作るべきプロダクトや機能、事業として選択すべきチェーンの判断などの形で今後さらに表面化していく
NFTのプロジェクトのNFTの価値は一部の中央で活躍している人に運営を依存しており、そのファウンダーはNFTを売り抜けてしまえばやる気を失いNFTの価格は下がります。DeFiではイールドファーミングでガバナンストークンを上乗せして高APYを演出し、価格を釣り上げ初期の投資家や開発者のポケットを潤わせるという仕組みがあります。これらは本来的な特定の組織や信頼を置くという意味で、クリプトの本質的な部分である分散性や検閲耐性を求める思想とは合致しないという指摘はそのとおりでしょう。
この記事では、Bitcoinとその他のWeb3はこの信頼性の最小化という点では、逆方向に進んでいることを指摘しています。とはいえ、全てをこのように分散性をもたせよ、という主張ではないので、エンタメ活用などの文脈ではトラストレスの概念を過度に持ち込むのはオーバーキルともいっています。ぼくとしては、この記事を通して、ユースケースに合わせて最適化させていく議論が今後もされていくだろうということを再認識し、Bitcoinことをもっと勉強しようというモチベーションができました。
2. Ethereumのブロック生成レベルでの検閲耐性
上記の記事を引用しNoobさんが以下のようなツイートを投稿し、Ethereum界隈のユーザーの間で議論が行われていました。大雑把にあえてまとめるならば、OFACの許可したトランザクションしか通らないのは、分散性や検閲耐性のあるパブリックブロックチェーンとして問題があるのでは?という議論です。
この記事では、課題の問題点を整理し、現状のぼくの認識を言語化しておきたいと思います。
OFACとブロック生成検閲耐性の懸念
米国の財務省外国資産管理室(OFAC)とは、外交政策・安全保障上の目的から、米国が指定した国・地域や特定の個人・団体などについて、取引禁止や資産凍結などの措置を講じる機関のことで、OFAC規制は、米国人・米国金融機関を含む米国法人のほか、米国内に所在する外国人・外国法人に適用され、主に、米国で決済される米ドル建等、米国接点を有する取引が、OFAC規制の適用を受るとされており、強い権限を持っています。
引用されているコインテレグラフの記事では、以下の点に言及しており、現状のEthereumのブロック生成における検閲された状況に対して問題提起をしています。
OFAC に準拠したイーサリアム ブロックの毎日の作成は 73% に増加し、コミュニティの検閲に対する懸念が高まっていること
OFAC で規制されている一部の MEV-Boost リレーは、特定のトランザクションを検閲します。その結果、イーサリアムの中立性を確保するために、ネットワークは非検閲 MEV-Boost リレーを採用する必要性があること
Ethereum バリデーターは、BloXroute Max Profit、BloxRoute Ethical、Manifold、Relayooor など、トランザクションを検閲する MEV-Boost 構成のリレーを破棄することで、OFAC コンプライアンスを低下させることができること
これはEthereumのコンセンサスメカニズムがPoSへ移行したことにより顕在化した問題です。
どのような問題なのかといえば、OFAC準拠のMEV-Boostのリレーには、Tornado Cashのようなプライバシープロトコルやその他OFACが許可していないウォレットアドレスのトランザクションが含まれないということです。OFAC 準拠のリレーによって構築されたすべてのブロックが検閲されるわけではありませんが、OFAC 準拠のリレーによって構築されたすべてのブロックは、非準拠のトランザクションがネットワークにブロードキャストされると検閲されます。
MEV-Boostの仕組み
MEV-Boostは、Ethereum(PoS)のためにFlashbotsによって構築された提案者とビルダーの分離 (PBS)の実装です。MEV-Boost を実行しているバリデーターは、ブロックスペースをビルダーの公開市場に販売することで、ステーキング報酬を最大化することができます。
PoS ノード オペレータは、バリデータ クライアント、コンセンサス クライアント、実行クライアントの 3 つのソフトウェアを実行する必要があります。以下のような流れになります。
MEV-boost はクエリを実行してブロック構築をビルダーのネットワークにアウトソーシングします。ビルダーはフル ブロックを準備し、MEV の抽出と報酬の公平な分配を最適化し、ブロックをリレーに送信
リレーは、手数料が最も高いブロックを選択するために、複数のビルダーからのブロックを集約します。MEV-boost の 1 つのインスタンスは、バリデーターによって複数のリレーに接続するように構成
バリデーターのコンセンサスレイヤークライアントは、認証とブロックインクルージョンのために、MEV-boost から受け取った最も収益性の高いブロックを Ethereum ネットワークに提案する
上記のツイートに関連して、Ethereumの有識者の方がコメントしていたので、抜粋して掲載します。
関連議論:
現状において、バリデータはSlashingのリスクを考えると大手の事業者にバリデータ運営を委託せざるを得ない状況があり、そういう事業者は当然OFAC規制に準拠することになると思います。
そのため、バリデータの運営を行うオペレータを分散的に行う技術であるDVT(Distributed validator technology)によって複数のオペレータによって分散運営化されれば、OFAC準拠のリレイヤーを使わずにパーミッションレスにしていくことが、この問題への対処方法の一つであると思います。
そもそも、日置さんが指摘するように、「たまたまPoSのバリデータの運営が資本集積した米国で行われることが多くて、そこが規制されている」というのはそのとおりだと思いますし、将来的には、MEV耐性や検閲耐性を改善させていきつつ変化していく過渡期にあるのが現状のEthereumなのだと認識しています。Ethereumの今後のロードマップの詳しい解説は以下の記事を参照すると良いでしょう。
参照:Annotated Ethereum Roadmap Comment
稲見さんの発言も本質的で面白い話だと思ったので、掲載します。
BitcoinでもPoWを行うマイニングプールの集権化という状況もあるはずで、ブロック生成の論点においては、両パブリックブロックチェーンの現時点での検閲耐性の議論は、今後も重要なトピックになると思っていますので、引き続きリサーチしつつ勉強していきたいと思います。
参考記事
Main Topics:
上記トピックの執筆で時間を取られてしまったため、「Web3と英語学習」の連載は続きをお待ち下さい。楽しみにしていただいている方には申し訳ありません。
もし「わかりやすい」、「ここが面白かった」といった感想をTwitterでシェアして教えていただけたらありがたいです。より良いニュースレターにしていくための参考にさせていただけたら嬉しい限りです。🙇♂️
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、また。
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