このニュースレターでは、Web3関連の情報収集を効率化したり、話題のプロジェクトやトピックをやさしく解説していきます。毎週1本以上、朝6時に配信しておりますので、ぜひ情報収集にお役立てください。クリプトを楽しみながら一緒に学習していきましょう。
突然ですが、DeFiのトレンドって追うのが大変だと思いませんか?
1ヶ月経てば新しいプロジェクトが話題に上がってきますし、3ヶ月も経てば別世界になっているのがDeFiですよね。
そこで今回は、「DeFiトレンドの基礎理解」と題し、トレンドに追いつくために把握したいプロジェクトや仕組みを1つ取り上げて解説していきます。
2022年までにDeFiで起きている大きな流れとしては、
プロトコルの複数チェーン対応
L2ソリューションの拡大
NFT-Fi、Game-Fi、Social-Fiの成長
トークノミクスの複雑化 ◀︎今回紹介
他にも膨大にありますが、概して以上のような状況だと認識しています。この中でもいちばん仕組みの理解がむずかしいといえる「トークノミクスの複雑化」を取り扱います。これはDeFiプロトコルの「新しいガバナンスのあり方」でもあります。
トークノミクスの複雑化の代表例としては、「veToken(Vote Escrowed Token:ヴォートエスクロウトークン)」と呼ばれる仕組みがあります。これを今回は解説していきます。
強調したい興味深い点は、Curveが取り入れ出したこの仕組みが秀逸すぎて、他のプロジェクトが自身のプロトコルに組み込んだり、「Curve Wars(カーヴ戦争)」と呼ばれるCurveのネイティヴトークンCRVの保有量を競い合うといった状況が発生していることです。
Curveに関連するトークノミクスの複雑化を把握できればDeFiのキャッチアップができ、DeFiがより一層面白くなるかと思います。ひとつひとつ順に理解しながら、学習してまいりましょう。
※今回はMain Topicにボリュームがあるため「Web3 Topics」、「Weekly Podcast」と「注目コンテンツ」のコーナーはお休みです🙇♂️
本日のサマリです。
☑️サマリ
Curveとは、ステーブルコインのスワップに特化したAMMのこと
Curve Warsとは、DeFiプロジェクトが利回りブースト先Poolを有利にするためにCurveネイティヴトークンCRVの獲得競争をすること
veTokenとは、ロック期間に応じて得られるガバナンス投票ができるトークンのこと。流動性提供報酬をブーストさせる効果やロック期間終了に近づくと減少するという機能が与えられており、クジラによるガバナンスへの影響力を抑制する
Vote EscrowモデルとしてはSolidlyなどでも同様の仕組みが採用されている
それでは、よろしくお願いします。
1.Main Topic:Vote Escrowed Tokenの仕組みとCurve Wars
前提
まずは、かんたんにCurveについて解説します。
🪙Curveとは
Curveとは、ステーブルコインのスワップに特化したAMM(Automated Market Makers)です。
USDCやUSDTなど米ドルステーブルコイン、WBTCやrenBTCといったBTCにペグしたトークン同士であれば、極めて少ないスリッページ(市場価格差異)でスワップできます。広義のステーブルコインには、BTCと価格連動する(=ペグする)という意味でWBTCやrenBTCも含まれます。(USDCとWBTCなどといったペアはスワップできません)
「ステーブルコイン同士を交換する?」という疑問が生まれるかもしれませんが、レンディングではUSDCだとAPR1%だが、USDTだと5%といった具合に利率が大きく異なることがわりとあります。ここがCurveの使い所です。
また、ETH-DAIといったペアでイールドファーミングをする場合、「USDCはもっているが、手持ちのETHを交換(利確)したくない」という状況もあり得ます。そこでUSDCとDAIをCurveでスワップして、LPを作るといったケースもあります。
以上がCurveの基本的なユースケースです。続いては、Curve Warsの概要についてみていきましょう。
⚔️Curve Warsとは 「CRVの獲得を競い合うプロトコルの戦略」
Curve Warsとは、流動性が欲しいさまざまなDeFiプロトコル同士が、CurveのネイティヴトークンCRVを獲得し、Curveにある流動性をプロトコルに引き込むことを目的にCRVの獲得競争をしている状態をさしています。
なぜ流動性が欲しいのかというと、多くのユーザーに自らのプロトコルのトークンを保有して欲しいからです。一部の人間だけが保有していると売り圧が発生した時に暴落に繋がりやすいですが、保有者が十分に分散していれば価格変動の影響もある程度は緩やかになり、プロトコルとしての地位を安定的にできます。
Curveでは、どこのPoolにどれくらいのCRVをボーナス配分するかを投票で決めます。この投票を行うためには単にCRVを保有していればいい訳ではなく、Curveのトレジャリーに1週間〜4年の間ロックアップすることで受け取れる「Vote Escrowed CRV=veCRV」を入手する必要があります。veはVote(投票)とEscrowed(預託された・預けられた)といった意味です。
上記の画像は流動性提供により得られる報酬一覧です。Base vAPY(Variable APY)が基本利率であり、Rewards tAPY(Token APY)がボーナス部分です。たとえば、1番Volumeが大きいtricrypto2というPoolには、Base vAPYが0.92%です。CRVを1年間ロックすれば3.38%の利回り、4年間ロックすれば8.44%でCRVを獲得できます。
これにより、DeFiプロトコルは自身のトークンPoolに高いAPYがつくように投票します。つまり高報酬をインセンティブにユーザーの資金が集まるようにすることがCurve Warsでの基本的な戦略です。資金が集まればより一層スリッページが減るので利用者が増え、取引手数料も期待できます。ステーブルコインであれば市場での価格安定に繋がります。
しかし、DeFiでは1年以上資金をロックすることなどはリスクが高いです。ハッキングやコントラクトバグで資金を引き出せなくなる可能性もあれば、トレンドの変化で全く無価値なトークンのためにまとまった資金を引き出せない状況になるからです。
リスクがあってもプロトコルにメリットが見込めるためCRVを獲得する行動を取ることになるのでしょう。
それではさらに、Vote Escrowed Tokenの仕組みをみていきましょう。
Vote Escrowed Tokenの概要
🗳Vote Escrowedの仕組み
繰り返しになりますが、veCRV(CurveのveToken)はガバナンス投票権を得るためにCRVをCurveにロックすることで入手することができ、ロック期間が長ければ投票力(Voting Power)に重みがつきます。1週間が最小で4年間が最大です。
☑️ロック期間に応じたveCRVの量の例
1年間:1CRV=0.25veCRV
4年間:1CRV=1veCRV
☑️Vote Escrowed Tokenの効果
次期間のトークン報酬の受け取りプールをどこにするか投票できる
ステーキング報酬を受け取ることができる
1と2の報酬をロック期間に応じてブーストする
上記のとおりです。
なお、veCRVはロック期限に近づくにつれ減少します。これはユーザーが投票力を下げないように追加でCRVをロックするインセティヴになっています。
🧙♂️Vote Escrowed Tokenを導入する理由
DeFiにおけるガバナンスの問題のひとつに「1トークン=1投票の問題」があります。どういう問題かというと、クジラと呼ばれる大量保有者によって短期的な目的のためにガバナンス操作が起こりうるというものです。Vote Escrowed Tokenはこの問題を解決することができます。
たとえば、クジラがその気になれば、ライバルプロジェクトのガバナンストークンを大量に購入し、悪意のある提案をDAOに行い、投票するといったことをすれば、プロジェクトは根本的に崩れていきトークン価格を意図的に毀損することができます。
そこで、Vote Escrowed Tokenを導入すれば、
長期間のロックをする人→プロジェクトと運命を共にする人→強い投票力を持つ人
という図式を作り上げることができるので、トークンをロックされることで、Curveとプロトコル自身が最善となるように行動するトークンインセティヴが生まれます。
そして、ロックすることでLP報酬をブーストされるというインセンティヴが働きます。また、自身のプロトコルのトークンの流動性増加も見込めます。これらがCurve Warの原動力であり、資産をロックしてでもプロトコルの利益となる行動を取る理由です。
さらに、市場に出回るCRVがロックされることで減少し、CRV価格を下支えすることにも繋がっているようです。
とはいえ、資産をここまでロックできるのはプロトコルがメインであって個人ではなかなか取れないリスクだと思います。
しかし、資産をロックせずともCurveのガバナンスに影響を与えることができるプロジェクトConvex Financeが登場しています。このConvexを通してもロック期間に見合った報酬を受け取ることができます。下記の画像を見るとveCRVのDistributionは5割ほどは少数のプロトコル(アドレス)に偏っていることがわかります。ちなみに約46%のアドレスはConvex(水色部分)です。
☑️Vote Escrowの留意点
veTokenモデルは、投票権にロック期間というクッションを設けることでインセンティヴを発生させることに成功しますが、一部のクジラに左右されにくいのであって必ずしも投票権が分散されていることにはならない点に留意が必要でしょう。
Vote Escrowed Tokenについての解説は以上となります。
他プロジェクトのVote Escrowed Tokenの例
Vote Escrowに関連するプロジェクトを2つかんたんに紹介します。
■Solidly
Curve以外でもVote Escrowモデルを採用するプロジェクトが出てきています。Fantomでローンチされる「Solidly(ソリドリー)[ve(3,3)]」というプロジェクトです。
ローンチ前ということもあり詳細は不明な点が多いですが、Curveと同様にveTokenを利用するAMMと発表されています。(3,3)とはOlympusDAOで採用されている報酬ブーストモデルのようにロック金額に応じて報酬を増やすモデルです。この仕組みも導入されるものと考えられます。
参考:Introducing OlympusDAO, An Algorithmic Currency Protocol
Curveと同様にVote Escrowモデルを採用しますが、CurveではveTokenを他人と取引することはできません。一方、Solidlyの場合はveTokenはNFT化されるので、取引を行うことができます。
■Bribe
Bribeは、DAOの意思決定における、投票の無関心や低参加率を解消するためのインセティヴを提供するプロジェクトです。流れは以下のとおりです。
BribeにあるPoolにプロジェクトのガバナンストークンをステーキングする
あるプロトコルの議決権を借りるためにUSDCを担保に入札する
入札の最高額が1でステーキングしたひとに報酬として分配される
という仕組みです。Aaveのガバナンストークンをステーキングできるプールがローンチ予定です。
veTokenとは直接関わりがなさそうに見えますが、CurveのCRVをロックせずにveCRVでプロトコルのガバナンスに影響を与えるモデルと考えると、BribeはConvexの仕組みに近いものがあるといえます。
Bribeは英語で賄賂(ワイロ)という意味です。DeFiではこうした仕組みがよく組み込まれるようになっていくかもしれません。
2.読者のコーナー
Aaveが開発しているDecentralized ソーシャルメディアLens Protocolを紹介した記事についてTwitterでコメントをいただきました。いつもありがとうございます!
前回分はこちらから読めます。
ソーシャルメディアはWeb2でさんざん慣れているユーザーが多いため、Web3の仕組みを活かしながらどのようなUXを提供できるかが注目しているポイントです。
その点、Lens ProtocolはNFTを活用したトークンエコノミーに力を入れており、仕組み自体は興味深いものがあります。Polygonメインネットなのでガス代が少ないのも利用者の裾野を広げるにはいいポイントだと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回はニュース解説はなく、仕組み解説になりました。注目のニュースもたくさんあるのですが、ニュースを羅列して貼るだけになってしまうよりも、深掘りして解説する方がいいと判断し、今回はこのような形式とさせていただきました。
取り上げる回によってコンテンツを調整していき、読者の方にWeb3分野を楽しんで頂けるよう、面白いコンテンツをお届けしていきたいと思います。
引き続きコツコツ学習していきましょう。
それでは、また。
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