EIGENトークンのユースケース - intersubjective staking
EIGENのUniversal Intersubjective Work Tokenについて理解を深める - #133
ブロックチェーンの最前線から重要トレンドを解説するニュースレターDIVE INTO CRYPTOへようこそ!1,700を超える投資家や開発者、クリエイターのコミュニティに飛び込んでみてください🧑💻🚀
📰 Crypto news
1.We are excited to announce that Sanctum Wonderland is now live!
SolanaのLST特化の流動性プロトコルのSunctumが新しいポイントイベントを始めました。
Wonderlandと呼ばれ、ルールに沿った条件をこなしていくとキャラクターが育ちます。
SunctumはSolanaでも直近でTVLが集まっているプロトコルで、主に開発力や流動性というエコシステム全体にメリットをもたらすプロダクトが評価されています。
仕組みとしては、Sanctum Infinity Poolと呼ばれるLST 間のスワップを可能にするマルチ LST 流動性プールを展開しています。INFは、インフィニティプールに流動性を提供する代わりに取得するトークンになります。
NF は利回りを伴うトークンです。その利回りは、インフィニティプール内のすべての LST のステーキング利回りに、インフィニティプールから得られる取引手数料を加えた加重平均の仕組みです。INFはステーキングする必要がなく、ウォレットに保持していれば利回りが得られます。
デポジットすると、LSTによる利回りは得られなくなります。その代わりINFの利回りを受け取ります。注意点として、LSTよりもINFの利回りが低くなる可能性があることです。
エアドロップを期待してポイントを稼ぐユーザーが増えており、実際にTGEを迎えればJTOなどと同じく利益が期待できるかも知れません。ただし、資金ロストのリスクもありますので大きな金額を入れるのは危険です。
Neodyme、OtterSec、Sec3 によって合計 3 回監査されていて、監査レポートはここです。
参加方法
SunctumでSOL(もしくはSOLのLST)をデポジットしてINF(SOLに連動する流動性トークン)をウォレットに保持する
ArmadaやKaminoなどの対象Solana DeFiプロトコルにデポジットする
対象のDeFiを利用した方がそのプロトコルの利回りを上乗せできるので資金効率が良いですが、その分リスクも上昇します。
参加にはリファラルリンクが必要です。よろしければご利用ください。
2.Memecoin protocol raises $5.5m — this VC calls it Ethereum’s Ordinals moment
先週のニュースレターで触れたHeroglyphs プロトコルによって展開されたミントサイトで550万ドルものHeroglyphsがミントされたようです。
Heroglyphsは、EthereumのソロステーカーがPoWマイニングのようなプロセスで発行されるトークンを受け取れるインセンティブを与えることを目指しているトークン発行プロトコルです。ビットコインにおいて、Ordinalsが大きな発展を生み出しましたが、それ近い存在とも言えます。
🫧 Deep Dive
EIGENのUniversal Intersubjective Work Tokenについて
EigenLayerからEIGENトークンの発表が行われました。エアドロップの概要についてはこちらの投稿にまとめています。
EIGENトークンは、ステーキングとガバナンスの目的で利用されることになっています。今回は、ステーキングをどのようにEigenLayerのプロトコルのセキュリティを補完するのか、について理解を深めます。
なお、今回発表されている情報は初期段階であり確定的な情報ではないこと、英語を日本語に翻訳して解釈するプロセスでニュアンスが異なる可能性があることに留意してください。
DYOR.
参考
はじめに
ブロックチェーンやその他の分散型システムでは、様々な参加者が協力して目標を達成するためのプロトコルが必要です。
これらのプロトコルは、参加者の適切な行動を奨励し、不正行為を抑止することで、システムの整合性を保ちます。Ethereumのスラッシングが例です。
不正行為やエラー(フォールト)には分類分けができます。EigenLayerのブログにおいて、これらのフォールトは大きく4つに分類されています。
客観に帰属するフォールト:数学的または暗号学的に証明できる不正。例えば、ブロックチェーンのトランザクション処理の正当性などがこれに当たります。
相互主観に帰属するフォールト:主観的ではあるが合理的な2人以上の人物に合意形成が可能な不正。オラクルデータの提供などが例として挙げられます。
帰属不可能なフォールト:被害者以外には観察できない不正で、例えば、分散型秘密共有におけるプライバシー侵害などがこれに該当します。
主観に帰属するフォールト:個々の判断による不正(不一致)で、一般的な合意が形成されにくいものです。例として「最も美味しいレストランはどこか?」といった主観的な質問があります。
今回では、1: 客観的または2: 相互主観に帰属するフォールトのみに焦点を当てています。
Work TokenとIntersubjectively attributable faultsの意味
EIGENトークンは、ブロックチェーンエコシステムにおける "Work token" として設計されています。
Work tokenとは、ネットワーク上で特定のタスクを行うために必要とされるトークンのことです。例えば、ETHはEthereumのバリデーターがステーキングを行い、検証作業を行う(Work)ことでもらえるトークンです。
従来のWork tokenには2つの主な制限があると考えられてます。
オンチェーン上で客観的に証明可能な違反行為(例:矛盾するブロックへの二重署名)にのみ適用可能であること。
特定のタスク(例:EthereumバリデーターになるためのETHステーキング)にのみ使用可能であること。
EigenLayerが導入したETHのリステーキングは、2つ目の制限を取り除きました。
リステーキングにより、ETHは「ユニバーサル」な客観的Work tokenになり、あらゆる客観に帰属するフォールトを検証するタスクを保証するためにリステークできるようになりました。しかし、それでも客観的なタスクに限定されています。
この制限に対して、EIGENトークンを利用することで解消することがキーポイントです。
EIGENトークンは、「相互主観的に帰属するフォールト(Intersubjectively attributable faults)」にまでセキュリティ機構で対処することを目指しています。
上記の図の説明。
Subjective faultsの具体例
パリは最も美しい都市か?
NFTの1年後の価格はどうなる?
Intersubjectively attributable faults(主観的ではあるが合理的な2人以上の人物に合意形成が可能なフォールト)の具体例
オラクル情報の正確性
信頼できるデータアベイラビリティの提供の検証
AIの推論結果は正しい情報なのか
Objectively faultsの具体例
EVMの実行
二重署名
などを想定しているようです。
EIGENトークンの目的
EIGENをAVSにステーキングするステーカーは、相互主観に帰属するフォールトの領域においてタスクを検証し、セキュリティを保つ機構に利用されます。
このステーキングのことをintersubjective stakingと呼びます。
この概念の起源は、Vitalik Buterinが2014-15年に発表した一連の記事(The p + epsilon attack, Schellingcoin, The subjectivity / exploitability tradeoff)に遡るそうです。その後、Augurがこれらのアイデアを発展させ、予測市場における主観的検証のためのトークンフォークの概念を導入しました(ただし、これは「特定目的」の実装でした)。
EIGENトークンは、この概念をさらに拡張し、主観的作業を「ユニバーサル」に適用できるよう一般化しました。このメカニズムの中核は、EIGENトークン自体をフォークすることで、不正を働いたステーカーのトークンを実質的に無価値にする仕組みで実現するそうです。
Slashing by forking
EIGENトークンのトークンフォークは、AVSが不正なステーカーからAVSを保護し、ユーザーへの損害を最小限に抑えるためのメカニズムです。EIGENトークンをフォークできるようにするのは、不正行為に対する抑止力のためです。
フォーク後、ユーザーとAVSは、元のトークンとフォーク後のトークンのどちらを尊重し、価値を与えるかを自由に決められます。スラッシュされたステーカーが不正行為を働いたという一般的な合意がある場合、ユーザーとAVSはフォーク後のトークンのみを評価するはずです。
フォーク後のトークンでは、ステークに本来備わっていた価値を失います。この メカニズムは「フォークによるスラッシュ(slashing-by-forking)」と呼ばれています。
EigenLayerの記事では、ステーカーの過失が合理的な疑いを超えている場合にのみスラッシュが行われ、大規模な共謀と多額の資金損失の可能性があれば、正直な行動を確保するのに十分だと主張されています。
もしフォークが発生した場合、DeFiで混乱が起きないの?
EigenLayerのブログでは、この問題に対処するために、EIGENプロトコルがIsolationとSolid Representationという2つの特性を備えていることが説明されています。
Isolationでは「フォーク対応トークン」と「フォーク非対応トークン」の2つのトークンを使用できるようにします。フォーク対応トークンは、ステーキングとフォークのために使用され、フォーク非対応トークンは、フォークを意識する必要のないアプリケーションで使用されます。
フォーク非対応トークンはSolid Representationと呼ばれる特性を持っています。Solid Representationとは、トークン保有者が将来のいかなる時点でも、フォーク後のトークンと同等の数のトークンを引き換えることができる性質を指します。
ここまでのまとめ
EIGENトークンは、ETHとの補完的な役割を果たすことで、EigenLayerのセキュリティを補完し、より高度なActively Validated Services (AVS)の開発を可能にします。結果としてDappsの可能性を広げます。
AVSは、以下のようにETHとEIGENの2つのトラストネットワークによる恩恵を得られます。
まとめ
EIGENトークンによるintersubjective stakingは、従来のスラッシングでは対処が難しいタスク、例えば主観的な要素の絡むオラクルやデータアベイラビリティのデータそのものの真偽などの検証などを補完します。
また、EigenLayerではAVSがETHとEIGENのステーキングを柔軟に組み合わせられるため、各AVSに適したセキュリティモデルを構築できます。
intersubjective stakingは初期段階であり、今後正常にワークさせるために必要な議論がコミュニティで行われます。
様々なAVS(具体的には、Oracles, Data Availability layers, Databases, AI systems, Gaming VMs, Intent & Order Matching & MEV engines, Prediction marketsと列挙されています)の開発が期待されると締めくくられてます。
疑問点を考える
Intersubjective faultsに対するIntersubjective stakingというソリューションに対する疑問を挙げてみます。
そもそも相互主観に帰属するフォールト(Intersubjectively attributable faults)が起きてしまうのって起こり得るの?
オラクルデータをAVSにオペレーターが提供する場合、そのオラクル情報について不正するインセンティブは十分にある?(つまり、想定してる不正は本当に起こるの?)
データアベイラビリティについては、正しい行動が既に客観的によるフォールトとしてスラッシングする機構があるので、Intersubjective stakingは過剰なセキュリティでは?
と思いました。
検討としては、
オラクルの場合、単純な数値データではなく、より複雑な情報(例えば、自然言語処理など)を提供する場合、その正確性を評価することが難しいケースがあり得るかも。
データアベイラビリティについては、データが利用可能かどうかは客観的に判断できますが、提供されたデータの品質や完全性については主観的な判断が必要になる場合があるかも。
予測市場では、予測結果の正確性だけでなく、市場の公平性や操作の有無なども重要な考慮事項で、これらは主観的な判断を必要とする場合があるかも。
などなど、まだまだ考慮できない状況がある場合、AVSを本質的に安全でセキュアに提供するためには、ETHによるリステーキングのEconomic Securityでは不十分になるのかも知れません。
そういう意味では、EIGENをステーキングすることで補強することができるので検討の余地はあるのかも知れません。
以上です。
🔵 From Community
もしこの記事を気に入っていただけたら「いいね・Xでのシェア」を頂けたらとても嬉しいです。質問や感想はSubstackでコメントをいただければ、ご返信させていただきます。
Xでいただいたリプライや感想を紹介しています。読者の声を聞かせてください!
⬛️ Follow on X
📜 Disclaimer
このニュースレターは、教育目的の情報提供を主旨としており、投資や金融、税に関するアドバイスではありません。ご自身での調査やデューデリジェンスが必要です。