このニュースレターでは、Web3関連の情報収集を効率化したり、話題のプロジェクトやトピックをやさしく解説していきます。毎週1本以上、朝6時に配信しておりますので、ぜひ情報収集にお役立てください。クリプトを楽しみながら一緒に学習していきましょう。
Lawrenceです⚡️🎧
今回の記事ではETH2.0を学習していきます。
ETH→通貨としてのイーサリアム
ETH1・2→イーサリアムの各チェーンやフェーズ
Ethereum→パブリックブロックチェーンとしてのイーサリアム
というかたちで区別しています。
それでは、まいりましょう。
1.Main Topic:【ETH2.0基礎理解】ETH2という概念がなくなり統合される理由
ETH2(イーサツー)という名称が使われなくなり、これまでコア開発者の中で使われていた表現に統一するとイーサリアム財団から発表がありました。それは以下のようなものです。
Eth1 → execution layer(実行レイヤー)
Eth2 → consensus layer(合意形成レイヤー)
Execution layer + consensus layer = Ethereum
「ETH2.0」という言葉を聞いたことがある方は多いかもしれませんが、具体的に「どのようなアップグレードがされるのか?」、「どんなことを目指しているのか?」など、あまりよく把握できていない方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回のMain Topicでは、以下の点について解説していきます。
基礎理解:ETH2.0とはなにか
概要:ETH2の名称が使われなくなる理由
展望:Ethereumが目指すもの
音声でインプットしたい場合は、こちらからポッドキャストの視聴が可能です。
前提
もともとあるETH1とは、Bitcoinから着想を得てヴィタリク氏を含む複数の創設者によって構築されたパブリックブロックチェーンを指しています。
Bitcoinとの比較では、複雑なスマートコントラクトを実行できる点が特徴で、これまでいくつもの分散型取引所(DEX)などのDapps(Decentralized Application)が登場してきました。
ETH1のコンセンサスアルゴリズム(ブロックチェーンに情報を記録する際の検証ノードの確認方法)は、Pow(プルーフオブワーク)で電気エネルギーを消費して計算力を競い合うものです。
しかし、Crypto GameやDeFiといったDappsが現れるとネットワークに膨大なトランザクションが増えることになった結果、以下のような課題がでてきました。
☑️ETH1.0の課題
ガス代の高騰
トランザクションの処理遅延
PoWによるエネルギー効率の悪さ
これらを解決するための一連のプロジェクトがETH2.0と呼ばれ、大型のアップグレードプロジェクトが進行してきました。
基礎理解:ETH2.0とはなにか
ETH2.0が達成したい目的は以下のとおりです。
PoS(プルーオブステーク)への移行
Sharding(シャーディング)の実装
まずはこの2つを理解して基礎固めをしていきましょう。
1.PoS(プルーオブステーク)への移行
PoSとは、Ethereumネットワークに32ETHをステーキングしたアカウントをバリデータ(検証する人)として、Ethereumに記録する内容を検証する仕組みです。ステーキングというのは、ネットワークにトークンを一定期間ロックして預けることをさします。
PoSは、PoWのようにエネルギーを消費してNonce(ナンス)を弾き出す計算力を競い合うものではなく、バリデータがランダムに選ばれ正しい内容の取引であるかを検証し合います。
ブロックを記録する間隔を短くすることができるので、トランザクションが早く処理されるようになります。もしバリデータが不正を働いたりするとステーキングしていた32ETHが没収されます。
ETH1では引き続きPoWのマイニングが継続されつつ、ETH2としてステーキングができる「Beacon Chain(ビーコンチェーン)」が並行稼働していき、将来的にBeacon Chainがメインチェーンに成り代わります。ETH1の方はやがてマイニングできなくなるように採掘難易度を急激に上昇させるデフィカルティボムを実行して、誰もマイニングできない状態に置き、将来的に稼働終了に向かいます。
完全にETH1がETH2に統合されるのを「The Merge(マージ)」と呼び、ETHの市場に出回る数は激減することになっています。ETH価格を押し上げする効果があるでしょう。
2.Sharding(シャーディング)の実装
PoSへの移行が完了し、EthereumでのPoWが終了した後、Shardingの実装がされます。これはセキュリティ上の問題でPoSであることが前提条件にあるからです。
仕組みは以下の図が参考になります。Beacon Chainに対してさらにシャーディング(サーバーの機能を分割して並列処理させること)を実装して、トランザクションを並行処理する構造になっています。
シャーディングにより、それぞれ別々にトランザクションを処理するので、データの整合性や統一性がなくなってしまうことをカバーするのが、Beacon Chainの役割でもあります。シャードの通信を仲介して、最新のトランザクションのデータを保持していきます。
Beacon Chainだけではスマートコントラクトを処理できないので、シャードチェーンがこれまでのEthereumのようにトランザクションを処理する役割を担います。
概要:ETH2という名称が使われなくなる理由
ここまでの基礎理解で、ETH1ではPoW、ETH2ではPoSという違いがあり、両チェーンの並行稼働のあと、ETH2がメインチェーンとして成り代わり、ETH1でのPoWは終了していくことになることを解説してきました。
ここからは、なぜETH2といった名称(概念)をあらためて変更する必要があったのか、について解説します。
理由の結論としては、「ETH1からスムーズに移行ができそうなので、概念理解をシンプルにするため」です。具体的には、4つの目的があります。
以下、*イーサリアム財団ブログの翻訳*です。
メンタルモデル
Eth2ブランディングの大きな問題の1つは、Ethereumの新規ユーザーに対して壊れたメンタルモデルを作り出してしまうことです。彼らは直感的に、Eth1が先でEth2が後だと考えてしまうのです。あるいは、Eth2が存在するとEth1は存在しなくなると思っている。このどちらも真実ではありません。Eth2の用語を削除することで、将来のすべてのユーザーがこの混乱したメンタルモデルをナビゲートすることから解放されます。
包括性
Ethereum のロードマップが進化するにつれ、Ethereum 2.0 は Ethereum のロードマップを不正確に表現するようになった。言葉の選択に注意し、正確に表現することで、イーサリアムに関するコンテンツがより多くの人々に理解されるようになります。
詐欺の防止
残念ながら、悪意のある行為者がEth2の誤記を利用して、ETHを「ETH2」トークンに交換するように、あるいはEth2のアップグレード前に何らかの方法でETHを移行しなければならないと言って、ユーザーを詐欺ようと試みています。
私たちは、この更新された用語が、この詐欺のベクトルを排除するために明確にし、エコシステムをより安全にするのに役立つことを期待しています。
ステーキングの明確化
また、一部のステーキングオペレーターは、Beacon ChainにステーキングされたETHを「ETH2」のティッカーで表示しています。これは、これらのサービスのユーザーが実際には「ETH2」トークンを受け取っていないことを考えると、潜在的な混乱を引き起こします。ETH2」トークンは存在せず、単にその特定のプロバイダーのステークにおけるシェアを表しているに過ぎません。
こうしたことを目的に、ETH2のもたらす役割にフォーカスし、Consensus layer(合意形成レイヤー)という名称にすることになりました。
展望:Ethereumが目指すもの
ETH2という名称が使われなくなりますが、今後のロードマップには変更ありません。
https://blog.ethereum.org/2022/01/24/the-great-eth2-renaming/
EthereumはThe Merge(2022年)を経て、Proof of Stakeに移行していきます。中心を通る太い黒矢印は元々のEthereumの根幹機能を表しており、これらは一貫して提供されます。
ユーザーは裏側の仕組みを意識せずとも、Ethereumにあるアプリケーションを使用することができ、アップグレードによって得られる分散性、セキュリティ、シンプルさといった利益を享受できるようになります。
2022年以降は、
処理速度の向上
ノードの負担緩和
セキュリティ向上
これらを目的にしたアップグレードが段階的に行われます。
より詳細なことについては、コインチョイスで墨汁うまいさんが記事を書いてらっしゃました。よろしければご覧ください。
2.Web3 Topics
イーサリアムのヴィタリク・ブテリンが語る、Web3、NFT、メタバース(Web3 Conference Tokyo より)
イーサリアムのヴィタリク・ブテリンが語る、Web3、NFT、メタバース(Web3 Conference Tokyo より) | あたらしい経済
Ethereum共同創設者のヴィタリクさんが、Web3 Conference Tokyoに登壇しました。
興味深かったのは、「現在、一番興味を持っているNFTプロジェクトはどれですか?」という質問に対し、*「私が興味を持っているNFTは、NFTであることだけが特徴ではないNFTです」*と回答したことです。アートであることのみを表現したNFTには限界が存在するとし、DAOと組み合わせたNFTについて言及していました。
Web3が社会にもたらすメリットとしては、より多くのプロジェクトが少数の大口投資家やグループではなく、ユーザー・コミュニティによって運営されるようになることをあげていました。
Web3の価値観が広まると、組織のあり方、資金調達のあり方など、既存のビジネスモデルとは異なるアプローチのプロジェクトが増えていくでしょう。Web3にはまだ課題も多くあり、ウォレットのセキュリティ、スケーラビリティ、ガス代、プライバシーなども改善が必要であったりしますが、インターネット初期のカオスが再来していることを喜ぶ声も耳にします。
Astar Networkが25億円の大型資金調達を実施。Coincheckの支援プログラムにも選出
Astar Networkが25億円の大型資金調達を実施。Coincheckの支援プログラムにも選出 - CRYPTO TIMES
日本発のパブリックブロックチェーンであるAstar Networkが大型の資金調達をしました。
海外暗号資産ファンドのPolychainがリードし、本田圭佑氏ら個人の投資家も参加しています。また、CoincheckのWeb3スタートアップ支援プログラム「Coincheck Labs」の出資第1号にもえらばれました。
Coincheckの大塚さんとAstarの渡辺さんは2年ほどまえから交流があったそうで、過去の出会いから資金調達に至る話はスタートアップのストーリーとして興味深かったです。
Astar Networkは、Polkadotのパラチェーンであり、Polkadotが親チェーン、Astarが子チェーンとして接続し、さらに接続先のマルチチェーンの中継地点の役割を果たします。
画像引用元:https://astar.network/
AstarにDappsをデプロイするとASTRトークンが報酬として得ることができる仕組みで、開発者に対するインセンティブがあります。Astarでは、Polkadotのセキュリティや相互運用性(インターオペラビリティ)を得ながら、Ethereumの環境でも稼働できるのでアプリのスケールがしやすく、持続可能な開発を支援します。
詳しくは、のぶめいさんのメルマガがおすすめです。
3.Weekly Podcasts
今回紹介するポッドキャストです。配信400回というキリ番を迎えることができました。いつも聞いてくださっているリスナーのみなさまありがとうございます。
引き続き音声でも学習できるようにコンテンツを提供してまいります。ぜひコメントやレターも募集中ですので気軽に投稿ください!
#397 「5歳児にICPを説明する」を翻訳してみた【前編】
#398 「5歳児にICPを説明する」を翻訳してみた【後編】
ICPを5歳に分かるように説明できるのか?というチャレンジングな海外の記事を翻訳して紹介しました。
ブロックチェーンとは、ICPとは、BitcoinとICPの比較なんかもされており、所々の表現はむずかしい箇所がありますが、おおむねやさしい解説になっているのかなと思います。
#400 自己紹介とスタートアップクリプトチャンネルの使い方
キリ番です。自己紹介とこのポッドキャストの目的、対象、今後どんなことをしていきたいか、という話をしています。
キリ番で放送をあらためて紹介すると、最近聴き始めたばかりの方も置いてけぼりになりにくいと考えています。そして、100回ごとのコンテンツの変化を検証できるので配信者としてもこうした振り返りが必要だと思います。
この回だけでもぜひ聴いていただけたら嬉しいです。
4.注目コンテンツ
Web3 Topicsのコーナーで紹介した「Web3 Conference Tokyo」の本編です。
8時間以上ある動画なので、かいつまんで視聴するのがおすすめです。
5.読者のコーナー
このメルマガを読んでいただき、Twitterでシェアしていだいた方を紹介します。読んだことを少しまとめてアウトプットしたり、感想をツイートしていただくと励みになります。
もし記事の内容がいいなと思っていただけましたら、ぜひTwitterでのシェアお願いいたします。
以下、読者のツイートです!
みなさま、ありがとうございます🙇♂️引き続きコツコツと学習してまいりましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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それでは、また。