ベンチャーキャピタルのParadigmが、MEVに関して公平性を実現しようとする仕組みとして、MEV税を提案する記事を出していました。
MEVはブロックチェーンのオープンでパーミッションレスな仕組み上、存在するもので良いも悪いも共存しています。
今回の記事はコンセプトを紹介するもので発展するイメージはまだ持てていませんが、知っておくと今後のトレンドという意味でいいと感じました。MEVを上手にコーディネートできるプロトコルが求められているからです。
Deep Diveでは、Amazonやメルカリが発展させたマーケットプレイスというビジネスモデルをweb3のツールはどのように改善する余地があるのか?どういうアプローチが考えられるのか記事を参考にしながら考えています。
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Decentralized YouTube alternative Odysee acquired by Forward Research despite content concerns
Arbitrum DAO votes to approve $215 million gaming ecosystem fund proposed by Arbitrum Foundation
Why Ethereum Layer-2 Network Taiko Is Spending $100K Daily on Blobs
Deposit USDe and loop their position with other stablecoins on Aave
Ethereum Layer 2 Fhenix, focused on confidentiality, raises $15 million in Series A funding
Paradigmが、EthereumやそのL2チェーンにおけるMEV(Maximal Extractable Value)を管理する新しい方法、MEV税(MEV Taxes)について内容を解説する記事を公開しました。
MEV税とは
MEV税は、トランザクションの優先手数料に基づいてスマートコントラクトが追加料金を課すことで、特定のアプリケーションがそのトランザクションから発生するMEVの大部分を取り戻す手法です。
例えば、トランザクションの優先手数料が1ドルの場合、スマートコントラクトが99ドルのMEV税を課すことで、99%のMEVを取り戻すことができます。
MEV税の目的
MEV税は、ブロックプロポーザー(ブロックを作成するエンティティ)ではなく、特定のアプリケーションやその利用者にMEVを還元するために課されます。これにより、取引の公平性を保ち、取引参加者がより多くの利益を享受できるようにすることが目的です。
誰がMEV税を課すのか?
MEV税は、特定のスマートコントラクトがトランザクションに対して課します。例えば、UniswapのようなDEXや自動マーケットメーカー(AMM)のスマートコントラクトがMEV税を設定することが考えられます。
どうやって課すのか?
優先手数料に基づく: スマートコントラクトは、トランザクションの優先手数料(priority fee)に基づいて追加の手数料を計算し、その手数料をトランザクション実行時に徴収します。
競争的優先順位付け: トランザクションがブロック内で優先手数料の降順で並べられる場合、MEV税が自動的に適用されます。
懸念事項
MEV税は、ブロックプロポーザーが競争的優先順位付けのルールを遵守することが前提です。ブロックプロポーザーがこれらのルールを無視して自己の利益を最大化しようとすると、MEV税が効果を発揮しなくなってしまうなどの懸念があります。
Decentralized YouTube alternative Odysee acquired by Forward Research despite content concerns
分散型データストレージプラットフォーム ArweaveのコアコントリビュータであるForward Researchが、Web3版YouYubeを開発しているOdyseeを買収しました。
Odyseeは、検閲されないweb3動画プラットフォームです。Forward Researchのウィリアム氏はOdyseeが言論の自由を確保する空間として重要な役割を果たすと述べています。背景として、南部貧困法律センター(SPLC)は、Odyseeを脅威とする報告書を出していました。
これは、Odyseeはコンテンツモデレーションがほとんどまたは全くなく、ヘイトグループや過激派に安定した収入源を提供しているため、としています。
Odysee のすべてのコンテンツは LBRY ネットワークでホストされており、Odysee はそこからコンテンツを取得します。Odysee には YouTube 同期ツールがあり、YouTube クリエイターは過去と将来のすべてのコンテンツを Odysee チャンネルに自動的にミラーリングできます。
Odyseeには、収益化プログラムも提供されています。プラットフォーム手数料はおよそ5%になっています。YouTubeでは30%程度に比べ手数料は抑えられています。
Arbitrum DAO votes to approve $215 million gaming ecosystem fund proposed by Arbitrum Foundation
ArbitrumDAOは、ネットワーク上のゲームプロジェクトをサポートするために3年間で2億2500万ARB(現在約2億1500万ドル相当)を割り当てるというArbitrum Foundationの提案を承認しました。
今回の提案のARBによる助成は、ゲーム カタリスト プログラム (GCP) に割り当てる予定で、提案によると、このプログラムは「ゲーム コミュニティの開発者やプレイヤーによる Arbitrum/Orbit/Stylus の認知度と採用をすぐに拡大する」ことを目的にしているそうです。
提案は、賛否両論でした。賛成した組織には、L2Beat、Wintermute、ゲームに特化したTreasure DAOなどがあり、反対票を投じた組織の中にはBlockworks ResearchやCamelot DAOなどでした。市場からの評価としては最高値の1.10ドルから約12%下落し0.97ドルになったようです。
今後、Arbitrumをベースのゲームプロジェクトが増加していくかも知れません。
Why Ethereum Layer-2 Network Taiko Is Spending $100K Daily on Blobs
EthereumのL2であるTaikoが、日次でBlobsのために10万ドル以上を負担していることが話題になっています。
これは特にバグという訳ではなく、Taikoの仕組みであるベースドシーケンス(Based Rollup)の仕様上起こるものであり、Taikoチームは想定通りだとしています。
現在の一般的なL2のシーケンスとは異なり、ベースドシーケンスは、トランザクションの順序付けをEthereumのメインネット上で行うため、単一の集中型シーケンサーに依存せず、分散化を高める仕組みを採用しています。
Taikoがこのベースドシーケンスを採用している理由は、分散化とセキュリティを最優先に考えているためです。しかし、この方法は費用が高くつくため、コストの面で課題もあります。それでも、Taikoは将来的に収益性が期待できると考えているようです。
Deposit USDe and loop their position with other stablecoins on Aave
AaveでEthenaのUSDeが担保資産として承認されたようです。
USDeは、DAIに次ぐ発行量で現在30億ドルを超えています。今一番勢いのあるステーブルコインと理解しています。
Aaveは、DeFiでも最も利用されている(TVL)が大きなレンディングプロトコルであり、ここに担保として採用されるのは、USDeの普及という意味で今後によって重要なターニングポイントになるかも知れません。
Ethereum Layer 2 Fhenix, focused on confidentiality, raises $15 million in Series A funding
完全準同型暗号化 (FHE) 技術を使用して、ネットワークの機密性を保つレイヤー2のFhenixが、シリーズAで1,500万ドルの資金調達を実施しました。
ラウンドには、Dao5, Amber Group, Primitive Ventures, GSR, Collider Ventures and Stake Capitalらが参加しています。
FHE は、処理段階でもエンドツーエンドのデータ暗号化を可能にするもので、スケーラビリティを殺さずかつ、プライバシーを両立できるという意味で有望です。
コプロセッサはステートレス ロールアップであり、L1 とL2 が最小限の変更で FHE サービスを利用できるにする、としています。プロセッサの信頼には、EigenLayerを用いることになっています。
ゼロ知識証明、FHE、MPCの比較については、以下の表がわかりやすいです。PSEの記事から引用しています。
Ethereumのガバナンスの仕組みについて解説しています。誰がEthereumのプロトコル変更を決定し、どのように行われるのか、またエンドユーザーの意見がどの程度影響するのかに焦点を当てています。
Farcaster vs. Lens Protocol: A Deep Dive
FarcasterとLensの比較が詳しくされているので、おすすめのスレッドです。
🫧 Deep Dive
暗号通貨と新たなイノベーションによるこれまでなかったマーケットプレイス誕生の可能性
ベンチャーキャピタルのVariantの創業者であるLi Jin氏のブログ「Crypto and Net-New Marketplaces」が、これからのweb3ビジネスを考える上で示唆に富んでいると感じました。
内容をまとめつつ、どのようなことが語られているのか整理し深堀りしたいと思います。
暗号通貨と新たなマーケットプレイスの可能性
地球上で最も成功している企業、例えばAmazonやMeta、Tencentなどは、ネットワーク効果を最大限に活用しています。
これらの企業は需要と供給を集約することで、ネットワークの価値を劇的に高めてきました。同じ原理は暗号通貨にも当てはまります。ビットコインやソラナ、イーサリアムのような暗号通貨ネットワークは、開発者、ユーザー、ネットワークオペレーターの協力で成り立ち、規模が拡大するにつれてその価値も高まります。
しかし、Web2とWeb3のマーケットプレイスを比較すると、既存のものだけでなく、まだ存在していないが存在すべきマーケットプレイスも見えてきます。
Li Jin氏はマーケットプレイスのスタートアップに投資してきた経験から、「需要と供給が互いを見つけ、双方に利便性を提供する新しいマーケットプレイスが必要であることがわかった」と語っています。しかし、現行のシステムには制約があり、それが原因で多くの潜在的なマーケットプレイスが実現していないのです。
暗号通貨は、マーケットプレイスにとってこれまでに考えることができなかった機会を提供すると考えられます。それは、トークンインセンティブによるスケーリングとオンチェーン構成可能性という特性です。以下、具体的なこれまでの課題を深く見ていき、web3のイノベーションがどのようにその課題を解消していく可能性があるのか考えてみましょう。
マーケットプレイスにおけるWeb2の限界と具体的な課題とは
Web2のマーケットプレイスは多くの問題に直面しています。例えば、ベビーシッターや介護サービスなどの分野では、高いレベルの信頼が必要です。このようなサービスでは、取引を行うために利用者間の信頼を確立する必要があります。
ベビーシッターの例では、マーケットプレイスはプロバイダーを実際に面接し、身元調査を行い、リアルタイムの可視性と場所を提供するソフトウェアツールを構築しなければなりません。
同様に、高齢者介護では、信頼性の高いプロバイダーを見つけるための厳密な審査が必要です。このような追加のサービスと運用レイヤーは、マーケットプレイスの運営コストを増大させ、結果的にマーケットプレイス全体の効率を低下させます。
このように、従来のWeb2のマーケットプレイスでは、信頼を確立するためにプロバイダーの身元調査や評価が必要であり、これには多大なコストと時間がかかります。
Web3のアプローチによる解決策
まず、トークンインセンティブを活用することで、マーケットプレイスは需要と供給のバランスを効果的に管理できます。
トークンを通じた金銭的インセンティブは、参加者を引き付け、ネットワークの成長を促進します。例えば、分散型物理インフラストラクチャネットワーク(DePIN)のHeliumやHivemapperは、トークンインセンティブを提供することで、基盤となるネットワークの供給側をブートストラップし、需要を順次拡大しています。これにより、初期投資コストが高いために存在しなかった多くの種類のマーケットプレイスが実現可能になります。
次に、オンチェーンのレピュテーションシステムは、信頼をグローバルに共有するための強力なツールです。各アプリケーションが個別にバックグラウンドチェックを必要とするのではなく、その情報をオンチェーンで保存し、どのマーケットプレイスでも共有できるようにすることができます。
これにより、マーケットプレイスはグローバルな信頼のストアを活用し、各マーケットプレイスが独自に信頼を構築するためのコストを削減できます。
具体的な例として、Farcasterエコシステムがあります。このソーシャルメディアプロトコルは、ユーザーの投稿、いいね、フォロー、プロフィールなどのデータをハブの分散ネットワークに保存します。ユーザーがプロトコル上に構築されたさまざまなアプリをインストールすると、ソーシャルデータも一緒に移動します。
これにより、ポータブルなソーシャルデータを活用して新しいマーケットプレイスが生まれる可能性があります。例えば、Farcaster上のBountycasterでは、ユーザーがネットワーク上の評判データを活用してバウンティを投稿したり見つけたりできます。
最後に、暗号通貨ベースの支払いシステムは、国際的な取引を初日から可能にします。これにより、リソースが限られているマーケットプレイスでもグローバルな展開が容易になります。例えば、bytexplorersのNFTを購入することで、シームレスな支払いとグローバルな参加が実現します。
次世代のマーケットプレイスへ
新しいテクノロジーを活用することで、エンドユーザーにとって大きな改善を実現する新しいマーケットプレイスが生まれます。
暗号通貨は、この進化の次の段階を表し、スケーリング、信頼、支払いの問題を解決することで、新しいコスト構造とスケーリング戦術が可能になり、新しいマーケットプレイスが生まれるのです。
現状では、まだまだビジネスとして既存のマーケットプレイスを凌駕するような規模のものは存在しません。ただ、トークンによるスケールの速さ、パーミッションレスでポータブルなオンライン情報の有効活用などは、これまで不可能だった規模でのマーケットプレイスの可能性を感じざるを得ません。
web3からAmazonやメルカリのようなマッチングプレイスに対して、これまで全く考えることができなかったアプローチで産業の一部をディスラプトするような本来の意味でのDXが起こるのは非常にエキサイティングで楽しみだなと感じます。
本日は以上です。
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