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そもそも、ブロックチェーンの仕組みとは
モジュラーブロックチェーンとは
ブロックチェーンの各機能の概要
そもそも、ブロックチェーンの分散性とスケーラビリティの定義とは
モジュラースタックの効果:自前でセキュリティを調達する必要がなくなる
ブロックチェーンのSovereignty(主権性)
モジュラーブロックチェーンの懸念点
モジュラーブロックチェーンとモノリシックの対比
今回の記事は、モジュラーブロックチェーンの全体像を理解するものです。以前、データアベイラビリティについて解説しましたが、そもそもブロックチェーンの基礎的な機能の理解が曖昧では、ちゃんと理解ができないという問題があるということに気づきました。
この記事では、そもそもブロックチェーンがどのような機能を持っていて、なぜモジュール化されているのか、モジュール化されたブロックチェーンにはどのようなメリットとデメリットがあるのかといった、全体像を理解できるようになっているはずです。
参考リンクは、記事の最後に列挙しています。
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そもそも、ブロックチェーン仕組みとは
ブロックチェーン内のブロックは、ブロック ヘッダーとそのヘッダーに関連付けられたトランザクション データという 2 つのコンポーネントで構成される。
ブロックは「フルノード」を通じて検証され、ブロックデータ全体を解析および計算して、トランザクションが有効であること、たとえばユーザーがアカウント残高を超えるイーサを送信していないことを確認する。
モジュラーブロックチェーンとは
ブロックチェーンの主な機能である、
Execution:トランザクションの状態の変更
Settlement:ノードによる証明検証と紛争解決、ブリッジハブの提供
Consensus:トランザクション順序付けとファイナリティ
Data Availability:ブロックの状態遷移の有効性検証に必要なデータの保存と公開
を分業された複数のブロックチェーンが束になって機能するアーキテクチャのブロックチェーンを指す。
これによって、スケーラビリティなどのブロックチェーンのボトルネックとなる課題に対して、役割が異なるレイヤー(チェーン)が通信して補完し合うことにより、分業されたノードが特化したスペックを活かしてネットワークを構成することが可能になる。
例えば、大容量の記録領域を持つノードはDA用ノード、オフラインにならないノードはコンセンサス、GPUが搭載されたノードはExecutionやZKPの計算に特化すること。
ブロックチェーンのトリレンマとは、分散性、セキュリティ、スケーラビリティのいずれか2つしか達成できないとする考え方です。セキュリティとは攻撃されても安全性が担保される設計を指し、いかなるブロックチェーンにおいてもセキュリティを蔑ろにすることはできないため、実際は分散性とスケーラビリティのトレードオフのような関係性である。
以下が、モジュラーブロックチェーンのランドスケープマップである。
https://x.com/sunnydece/status/1699124522757283997?s=20
ブロックチェーンの各機能の概要
Execution:トランザクションの状態の変更
トランザクションと状態変更は最初にここで処理される。ユーザーは通常、トランザクションに署名し、スマートコントラクトを展開し、資産を転送することにより、この層を通じてブロックチェーンと対話する。
https://x.com/sunnydece/status/1699124581506900006?s=20
Settlement:ノードによる証明検証と紛争解決、ブリッジハブの提供
Settlementレイヤーでは、ロールアップのExecutionが検証され、紛争が解決されるレイヤーを指す。このレイヤーはモノリシックチェーンには基本的に存在せず、モジュラースタックのオプション部分とされている。
https://x.com/sunnydece/status/1699124596153409680?s=20
Fraud proofなどのチャレンジに活用されることが想定されており、イメージとしては裁判所のような機能である。
https://x.com/sunnydece/status/1699124614285398216?s=20
Consensus:トランザクション順序付けとファイナリティ
Consensusレイヤーは、ブロックの内容をダウンロードして実行し、状態遷移の有効性についてコンセンサスに達するフルノードのネットワークを通じてトランザクションの順序付けとファイナリティを提供する。
https://x.com/sunnydece/status/1699124623290601883?s=20
Data Availability:ブロックの状態遷移の有効性検証に必要なデータの保存と公開
状態遷移が有効であることを検証するために必要なデータは、このレイヤーに公開および保存する必要がある。
これは、悪意のあるブロック作成者がトランザクション データを差し控える攻撃が発生した場合に、簡単に検証できる必要があるため。
データアベイラビリティレイヤーは、ブロックチェーンのスケーラビリティのトリレンマの主なボトルネックになっている。
そもそも、ブロックチェーンの分散性とスケーラビリティの定義とは
ブロックチェーンにおける分散性とは、ノードを運営する主体の主体的分散、地理的分散、ハードウェア要件など参入障壁の難易度、ネットワークの検証するコンピュータリソースの要件の難易度などが挙げられる。
これらすべてにおいて、実質的に特定のノードクラスタにネットワークを依存している場合、分散性が低くなり、逆に依存度が低くパーミッションレスで容易にノードが参入でき、実際に多くのノードの属性に偏りがなく十分な数が稼働しているブロックチェーンは分散性が高い。
ブロックチェーンにおけるスケーラビリティとは、ブロックチェーンのスループットを検証コストで割ったものを指す。つまり、検証に必要なリソースを低く抑えながら、増加するトランザクションを処理できるブロックチェーンの能力である。アプローチとしては、ブロックサイズを大きくするか、Executionの計算検証をオフチェーンにシフトされることである。
ブロック サイズを増やすことができるため、ブロックに含めることができるトランザクションの容量を増やすことができる。しかし、ブロック サイズが大きくなると、より高い計算出力の必要性に応じてフルノードを実行するためのハードウェア要件が増加するため、ネットワークの集中化につながる懸念となる。
オフチェーンにExecutionを移行させる発想は、PlasmaやRollupの考え方でモジュラースタックを想定している。モジュール式の実行レイヤーとデータ可用性レイヤーを通じて、スループットを拡張できると同時に、計算コストと検証コストの相関関係を打ち破ることでネットワークをトラストレスかつ分散化する特性を維持するアプローチを取りやすくなる。
モジュラースタックの効果:自前でセキュリティを調達する必要がなくなる
モノリシックなアーキテクチャのブロックチェーンでは、セキュリティを自前のバリデータとトークンによってセキュリティの安全性を固辞しなければいけない。しかし、トークンの時価総額が一夜にして乱高下する暗号資産市場において新興PoSネットワークのトークンが一朝一夕に安定した時価総額を維持することは簡単ではない。したがって、新興ブロックチェーンがセキュリティを保つためには十分な規模のバリデータを参加できるまで中央的に集権化されたバリデータによって管理される。
しかし、モジュラーブロックチェーンにおける共有セキュリティ(Shared Security)という考え方では、既に構築され時価総額、十分なバリデータが参入しているネットワークの安全性を活用するために、そのデータアベイラビリティレイヤーやコンセンサスレイヤーを活用するという選択肢がある。
これにより、新興のロールアップがセキュリティを自前で調達する必要がなくなり、アプリケーションの開発などに集中することができるようになる。
ブロックチェーンのSovereignty(主権性)
https://x.com/sunnydece/status/1699124596153409680?s=20
原則的に、モノリシックブロックチェーンのアプリケーションは、そのチェーン上のルール変更を強制的に受け入れる必要がある。例えば、Ethereumにデプロイされたアプリケーションは、EIP-1559のような基本ガスと優先ガス手数料の導入を前提に機能の設計を行う必要があり、これは後になって変更されればそれの対応にも迫られることになる。
一方で、モジュラーブロックチェーンにおいて、Sovereignty(主権)と呼ばれる概念は、アプリケーションやノードがブロックチェーンから強制されるルールから主権を保ち、自らのルールを自らの戦略と選択に合わせてフィットさせていくことができるという主権性があると言われる。
ExecutionとSettlementをロールアップが受け持つ場合、そのロールアップのノード(シーケンサー)が、どのようなルールでトランザクションを実行し検証するのかというルールを決める主権を持つことが可能になる。このようなロールアップをSovereign Rollupという。
仕組み上、モノリシック・ブロックチェーンではほとんど提供されることはない高スループットのDeFi特化App-specificchainであるDYDXチェーンなどの構築はこのような背景がある。
このような主権性は、チェーンごとの自律性と相互運用性を重視するCosmos(IBC規格のブロックチェーン)と相性がよく、実際DYDXチェーンはEthereum L2からCosmosベースのチェーンに移行した。
Sovereign Rollupの詳細については、以下のページを参照。
モジュラーブロックチェーンの懸念点
Multicoin Capitalは、「The Hidden Costs of Modular Systems」という記事では、以下のような懸念点が挙げられることに言及している。
モジュラー・ブロックチェーンはコードを高速に実行しない
モジュール化はユーザーの取引コストを増大させる
アプリのロールアップはデベロッパーに新たな収益化の機会をもたらさない
アプリのロールアップではアプリ間の渋滞に対処できない
柔軟性は過大評価されている
上記のブログでは、Eigen layerのようなプロジェクトが提供するリステーキングによるデータアベイラビリティの活用は不必要だと主張している。
現在のイーサリアムの DA はおよそ ~83 KB/s 。EIP4844では、これは約 2 倍の最大 166 KB/秒になる。EigenDAはさらに 10 MB/秒を追加する。しかし、すべての ETHがEigenDAにリステーキングされるわけではなく、セキュリティの前提条件が異なる。
一方で、Solana は現在、約 125 MB/秒の DA (ブロックあたり 32,000 シュレッド、シュレッドあたり 1,280 バイト、1 秒あたり 2.5 ブロック) を提供している。
リステーキングとモジュール化によって DA を拡張する方法はたくさんあるが、これらのメカニズムは複雑性や上記のような懸念をもたらすので不必要であると主張している。
https://x.com/sunnydece/status/1699124637249200497?s=20
余談:モジュラーブロックチェーンの歴史
2015年のBitcoinにおけるDrivechain(BIP300, BIP301の総称)のコンセプト。
BIP300: Hashrate Escrow
特定のアドレスにwiithdrawするトランザクションをブロック生成時に賛成反対を投票をする。各マイナーがどうVerifyするかは意図的に指定されていない。
BIP301: Blind Merge Mining(BMM)
BTCのマイナーがマージマイニングの報酬をBitcoinチェーン上で受け取る仕組み。マージマイニングをする時にサイドチェーンブロック生成者がメインチェーンブロック生成者に報酬金を出すことができる。
マイナーはDrivechainをBMMで採掘する。これによりファイナリティはBitcoin L1で確定する(二重支払いの禁止)
DrivechainにデポジットされたBTCをL1に戻すのは、ハッシュパワーによる投票で一定数満たしたら承認される(二重出金や不正出金の禁止)
なぜこれがモジュラーなのかといえば、サイドチェーンのDB保持するノードとそれを検証し投票するマイナー(コンセンサスレイヤー)が分離されているから
モジュラーブロックチェーンとモノリシックの対比
モノリシックブロックチェーンは、どの程度優位性があるのか。一概にモジュラーにすべての優位性があるということではない。たとえば、レイヤー間のコミュニケーションコストが加わった分トータルコストは増える。並列化がモジュラーの強みではあるが、特にモノリシックの代表Solanaは計算を並列化してハイパフォーマンスを発揮することができる。
モジュラーブロックチェーン間でのコミュニケーションにおいては、stateless(ステートレス)クライアントが非常に重要な役割を果たす。これは違うデータベースを持ってるもの同士、あるいはデータベースを持つノードと持たないノードの間のVerificationやコミュニケーションを可能にするから。
参考リンク:
本日は以上です。
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