このニュースレターでは、Web3に興味のある方、Web3関連の情報収集を効率化したい方に向け、話題のプロジェクトやトピックをやさしく解説していきます。毎週水曜日朝6時に配信しておりますので、情報収集にぜひお役立てください。クリプトを楽しみながら一緒に学習していきましょう。
10,000体をミントするジェネラティブNFTといったジャンルが確立し、国内外でさまざまなNFTプロジェクトが増えました。
NFTは、アートという分かりやすい部分から話題を集めましたが、ゲーム、会員証などユースケースは多岐に渡るという認識が広まっていることはあえて説明する必要がないほどでしょう。
今回は、MoonbirdsというジェネレラティブNFTが、先週ローンチと同時に6,600万ドル(84億円以上)の売上高となり話題となったことを切り口に、スタートアップの「資金調達手段としてのNFT」について概観したいと思います。
■基本リンク
公式サイト:https://moonbirds.xyz/
以下、Main TopicのSummaryです。
Summary
Moonbirdsとは、10,000個のプロフィール画像用のNFT(いわゆるPFP)
著名なファウンダーとしてKevin Rose氏やJustin Mezzell氏によってコレクション運営を担当するPROOFが組織されている
現時点では利用できませんが、ネストすることで追加で収益(Additional benefits)を得ることができたり、保有者限定のメタバースといった構想がある
収益の100%は、TrueVenturesが支援するweb3メディア企業であるPROOFHoldingsIncに直接送られる。チームの拡大や新プロダクトの開発を通じたMoonbirdsを含むPROOFのコミュニティに対する付加価値を生み出すことに利用されると宣言されている
NFTは、スタートアップの資金調達を民主化したといえ、私たちの意見を投資家という立場で反映できるようになった
それでは、今週もよろしくお願いします。
1. Main Topic:Moonbirds🦉から見るスタートアップの「資金調達手段としてのNFT」
Moonbirdsとは
起業家のKevin Rose氏がFounderのProof.xyzが立ち上げたGenerative NFTプロジェクト「Moonbirds」が、爆発的な規模のNFTコレクションとして存在感をみせました。ローンチは4月16日です。
Moonbirdsとは、10,000個のプロフィール画像用のNFT(いわゆるPFP)であり、2,000個が「PROOF Collective」のNFT保有者限定でフリーでミントされ、125個は運営がコラボなどに活用予定、残りの7,875個がランダムに当選したリストメンバーに2.5ETH(約10万円)で販売されました。
2次流通でフロアプライスは上昇し続け、執筆時点ではOpenSeaでのフロアは39.46ETH(約1,500万円)です。高値では135ETHで取引されたこともあり、レアリティの高いものの価格が高騰しています。一部ではレアキャラを開発者らが買い集めるといった疑惑が指摘されていたこともあるようです。
なぜMoonbirdsは話題となったのか
著名なファウンダーとしてKevin Rose氏やJustin Mezzell氏によってコレクション運営を担当するPROOFが組織されていることや、Proof collectiveやGrailsが背後に関わっているという点がユーザーに良い印象を与えていることは事実としてありそうです。
補足:Proof collectiveとは、NFTの熱心なコレクターとアーティスト1000人からなるプライベートグループです。PROOF Collective NFTを保有することで、コレクティブへのメンバーシップとすべての特典が得られます。
NFTを保有することで、IPを保有できたり、IPFSによるホスティング、ユーティリティのアンロック、メタバースへのアクセス権といった特典をMoonbirds所有者に与えるとしています。
Moonbirdsには、特徴的な仕組みに「ネスト(巣)」という特典があります。
ネストは、ユーザーのウォレットからNFTをロックアップすることで、有効にすることができ、ロックしていた期間に応じてレベルが上がっていく仕組みです。ロックされた期間はトランスファーできません。現時点ではこの機能は利用できませんが、ネストすることで追加で収益(Additional benefits)を得ることができると記載されています。
収益内容ははっきりとは分かりません。DiscordなどMoonbirds保有者向けには早期にアナウンスがあるかも知れません。
可愛らしいフクロウのモチーフを擁したNFTプロジェクトですが、様々な仕組みを背後に組み込むマーケティングにより、プロジェクトを率いるチームは、たったの1週間ほどで最終的に6,900ETH(約260億円)規模の資金を集めることに成功しました。
収益の100%は、TrueVenturesが支援するweb3メディア企業であるPROOFHoldingsIncに直接送られます。チームの拡大や新プロダクトの開発を通じたMoonbirdsを含むPROOFのコミュニティに対する付加価値を生み出すことに利用されると宣言されています。
参考動画:
ターニングポイントとなったMoonbirds
NFTに関連する海外のインフルエンサーであり、起業家・エンジニアのDaniel Tenner氏が以下のスレッドで、スタートアップにおけるNFTによる資金調達のあり方について「Moonbirdsがターニングポイントとなった」という趣旨のツイートをしていました。
上記スレッドは非常に長いので、以下、日本語翻訳して要約します。
私は、BAYCが開拓したNFT PFPプロジェクトの主要な機能の1つは、スタートアップのための資金調達メカニズムであることを、昨年の10月以来ずっと提案してきた。
NFTの重要な用途には、グローバルなデジタル市場の基本の構成要素であること、ゲームにおける収集・交換可能なアイテムであること、スタートアップファンドにおける株式売却の強力な代替手段、といったものがあると思っています。
NFTゲームのPixelmonが証明したのは、シリーズA/Bの資金(7000万ドル)を、基本的に何も持たずに資金調達できるということです。資格もない。チームさえもない。ただ、誇大広告があるだけです。「彼らが何も持たずに7000万ドルを手に入れられるなら、私も何かで7000万ドルを手に入れ、それを自分が作る価値があると思うものに使えるかもしれない」ということなのです。
私が「NFTプロジェクトはスタートアップであり、NFTは株式の革新的な代替物である」と言うたびに、人々はSECがこの分野を取り締まり、NFTを証券として分類するため、すべてを閉鎖し、パーティーを終わらせるのではないか等と怯えています。
私は「NFTのほとんどは証券である」と述べています。しかし、株式よりも優れているので、その性質を受け入れて改善することが重要です。
Moonbirdsは、(今のところ)大成功を収めた最初のプロジェクトのひとつで、それが何であるかを恥じることなく表現しているものだと思います。(ファウンダーの)ケビンとライアンは、お金を集める目的は「アートを売る」のではないこと、そのお金を製品を作るための資金として扱うこと、などをはっきりと述べています。
YugaLabs(BAYC)がスタートしたとき、ユーティリティがまだ理解されていない新しいコンセプトであるグレーゾーンで活動していたのに対し、Moonbirdsは、製品を作っていて、この初期投資トークンを持つことは、製品が成功した場合に報酬を受けることができることを明確にしています。
ムーンバードは、起業家のためのモデルを証明した。彼らがMoonbirdsを成功させるかどうかは関係ない。扉は開かれている。この先、多くの起業家が誕生するだろう。
かなり長文の引用となりましたが、原文スレッドはもっと長いのでご容赦ください。原文をご覧になりたい方はこちらから。
要するに、NFTプロジェクトは当初、NFTをたくさん販売して利益を得て終わり、というビジネスモデルと認知されてきたが、NFTを使った様々な仕組みを提供することでその先のビジネスの資金調達を行う機能があることをMoonbirdsは証明している、ということなのだと思います。
資金調達としてのNFT
シリコンバレーなどのVC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家は、「あらゆるものに資金を供給し、何がうまくいくかを見定める」という側面がありますが、彼らの意志が色濃く反映されるのは当然です。たとえばa16zが投資するテクノロジーは、次に私たちが求めている技術というよりも、a16zが流行らせたいテクノロジーかも知れないのです。
資金調達のほとんどが、未上場企業の株式の分配により行われますが、これは地理的、人脈的な壁が高いのは想像に難しくありません。自分が推しているWeb3プロダクトを開発する企業の株式を容易く手に入れることはできないのは、何となくイメージできるのではないでしょうか。
一方、NFTの大きな魅力は、資金調達のプロセスを民主化し(VCや認定投資家だけがアクセスできるのではなく)、スタートアップのコミュニティを強化することもできる点です。そして、それは私たちが本当に今求めているテクノロジーであることを「NFTを購入する」といった行動を通じて、誰の許可も要らずに意思表示することが可能なのです。NFTであれば、国境はありませんし、人脈がなければ参加できないといったことも一般的にはありません。
しかも自分で事業を打ち立てたいと思ったとき、NFTプロジェクトによる資金調達であれば、株式会社で資金調達をするような制約はありません。インターネットで無料で集めた情報だけでもプロジェクトを組み立てるのはあなたの発想次第と言えるでしょう。
その意味において、NFTは、スタートアップの資金調達を民主化したといえると思いますし、私たちの意見をダイレクトに投資家という立場で反映できるようになったことを意味していると思います。
本日のMain Topicは以上です。
もし、「わかりやすい」、「ここが面白かった」といった感想がありましたらコメントやTwitterでシェアして教えていただけたらありがたいです。より良いニュースレターにしていくために参考にさせていただけたら嬉しい限りです。
2. Web3 Topics
今週までのWeb3に関連するトピックをピックアップしていきます。インプットにお役立てください。
1.Announcing a16z crypto research | Andreessen Horowitz
a16zが、「a16z Crypto Research」という研究チームを発足させました。
Boneh教授は世界的に著名な暗号学者であり、スタンフォードブロックチェーン研究センター(CBR)の共同ディレクターを務めます。ブロックチェーンの検証システムの研究にも用いられる「Verifiable Delay Function(VDF)」の概念を共同開発し、Web3で広く採用されているBLS(Boneh, Lynn, Shacham)署名など、重要な暗号プリミティブ(構成要素)を設計。
a16z Crypto Researchのチームには、2017年にゼロ知識証明システムの一種「Bulletproofs」を発表したBenedikt Bünz氏の他、ソーシャルネットワークのプライバシー/暗号プロトコルの研究者、NFTプロダクトデザインの専門家、Diemブロックチェーンプロジェクトでリサーチャーを務めた人物も参加しています。
これからの活動内容は、SubstackのニュースレターでWeeklyに更新されるようです。
2.漫画『左ききのエレン』NFTが総額約830万円落札、落札者としてDAOが漫画出演決定
「黒い化物」を落札したのは、Astar Networkの創業者、渡辺創太氏。「チェルシーの夜」はDAO(分散型自律組織)Astar Degensが最終的な落札者となりました。
落札者は、スピンオフ漫画のTHROW UP A DEUCE(後編)」に出演できる特典が設定されており、渡辺氏とAstar Degensが、何らかの形で作品に登場することが決まっています。
渡辺さんは、この機会にnoteを更新され、左利きのエレンに対する気持ちを細かく語っています。
以下、引用します。
左ききのエレンという作品が好きだということもありますが、今回のNFTの取り組みに参加したのは、取り組み自体に価値があると考えたためです。アートは専門家ではないですが、これまでの常識を覆す何かが作品として表現されたとき、新しいアートとしてのカテゴリーが作られた時に価値が生まれると思います。その点で漫画の中のアートをNFTで再現するのは今までなかった新しい取り組みですし、それに値がついたこと自体に価値があると思っています。この作品は「会社経営などで巨万の富を築く」まで持ち続けようと思います。
一方で、何で自分で盛り上げて、自分で入札してしまったんだろう…という思いはあります。他のユーザーに譲れないほど好きでたまらない作品だったのでしょうか。
3. Weekly Podcasts
これまでに放送したポッドキャストからいくつか取り上げてご紹介します。気になるタイトルがあればぜひクリックして聞いてみてください。
なお、今回ではこれまでのニュースレター未掲載のエピソードを一つと、今回のMain Topicである「NFT」に関連するエピソードをピックアップしてみました。
#453 イーロンマスクはTwitterで何をしようとしているのか
イーロンマスクがTwitterを買収しようとしている時の収録回です。現在では、買収が決定しましたね。
放送内では、イーロンマスクは「人間をテクノロジーで限りなく進化させようとしている」という話をしています。スペースXやテスラのCEOという印象が強いですが、もともとはエンジニアであったと思います。
そんな彼が目指しているものとは…といった話をしてみました。
■NFTに関連するエピソード
Play to Earnのポンジの是非が話題となったときの放送です。ポンジスキームとは、集めた資金をあたかも運用などで増やしているかのように見せながら、実際はただ集まったお金をちょっとずつ分配しているだけ受け流し、その後持ち逃げするといった手法の詐欺行為です。
P2E自体、さまざまなゲームがあり、アクシーなどは手数料により運営とコミュニティに収益が入っていくものだと理解しているのでポンジスキームと理解するのはやや大雑把すぎるという気がします。
ところが、最初に入った人だけが得をし、後に入った人は出涸らしの利益を得るか、損をするのかという仕組みを指摘してのことであればわりとevilな仕組みと言わざるをえない気がします。
MetaMaskの脆弱性を狙ったハッキング手法を記事をもとに紹介しています。避ける方法はなぞにエアドロップされたトークンに署名しないといったことがあげられます。
普段しっかり意識した管理をしなければこうしたケースはどんどん増えていくので、定期的な情報のアップデートはマストだと思います。少しでもお役に立てればと思います。
4. 読者のコーナー
読者からのコメントを紹介していきます。ぜひアウトプットや交流にお役立てください。
仮説を立てて情報収集するのは意識しないとできないので非常にむずかしいです。クリプトに関わるテクノロジーをリサーチする身としては、引き続き気をつけながら分かりやすい情報をお届けできるように努めていきます。
ありがとうございます!
最後までお読みいただきありがとうございました。
4月の最終週となり、GWが近づいてきました。本業の多忙によりリサーチ時間や執筆時間をうまく取れなかったりと、何度も「今週号は延期か...」と思いましたが何とか毎週配信することができました。
気温差が激しく春ですが夏日のような日が増えていることを感じています。体調に気をつけつつ、引き続きリサーチしながらクリプトを楽しんでいけたらと思います。
英語圏への情報発信を始めました。今のところ記事を2つ書いています。
DeepLを使わずに書いているので、スペリングが間違っていたり、文法が若干おかしい部分は多々あるのですが、書きながら慣れていきたと思っています。
文章を自然なスピードで思い描くことができれば、スピーキングにも良い影響を与えることができると考えています。クリプトは海外進出が当たり前のようになっているので、引き続き勉強していきます。
5月もよろしくお願いします。
それでは、また。
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