このニュースレターでは、Web3に興味のある方、Web3関連の情報収集を効率化したい方に向け、話題のプロジェクトやトピックをやさしく解説していきます。毎週水曜日朝6時に配信しておりますので、情報収集にぜひお役立てください。クリプトを楽しみながら一緒に学習していきましょう。
Optimism(オプティミズム)というEthereumのレイヤー2(以下、L2)ソリューションが、$OPというトークンを発行し、コミュニティによるガバナンスへ移行していく、という発表がありました。
エアドロップの対象者はこちらの記事から確認ができます。なお、この執筆時点ではエアドロップは開始されていませんのでスキャムに注意してください。コントラクトアドレスはこちらです。
ちなみに2022年2月のBanklessのニュースレターでは、L2のトークン発行について触れられていました。
参考:How to get ready for L2 tokens
2022/05/04 追記
OptimismからOptimismにあるプロジェクトに対してOPトークンを分配するとの発表がありました。
EthereumのThe Mergeの延期が発表されており、PoW→PoSへの以降は複雑な作業で課題が山積みないま、L2への注目が集まるのは自然な流れだと思います。The Merge後もOptimismなどのL2は利用される可能性が高いです。
そこで今回は、L2御三家(Optimism、Arbitrum、zkSync)の一つである、話題の「Optimismを概観」しつつ、「L2のガバナンスにどのような意義があるのか」について考えていこうと思います。
(L2御三家は筆者の勝手な認識です👀)
以下、Main TopicのSummaryです。
Summary
Optimismとは、Optimistic Rollupという技術をベースにしたL2ソリューションの名称のこと
Optimistic(楽観的な) Rollupは、「楽観的な」という言葉の通り、ロールアップされL1に書き込まれた時点では検証を行わず、異議申し立て(Fraud Proof)が発動された時だけ検証が行われる
Optimismによれば、OSSなどの公共財を持続的な活動の支援をしたり資金調達やマネタイズの課題をクリアするビジョンを掲げて、Optimism Collectiveを発表、Optimism Foudationを発足した
Optimism Foundationは、OP Labs PBCから徐々に離れ、より広範なOptimisticエコシステムに向けて権限を委譲するための重要な最初のステップといわれている
L2には管理者へのトラスト構造の懸念事項があり、Optimism以外のL2にも共通する部分がある。L2におけるコミュニティによるガバナンスへの移行は、管理者に依存するトラスト構造から脱却をするためのステップとして重要な意義がある
それでは、今週もよろしくお願いします。
1. Main Topic:🎈Optimismのトークン発行とL2ガバナンスの意義
前提:スケーラビリティ(処理能力の向上)とは
Ethereumの場合、約10~20秒に1ブロックが生成され、このブロックに入れられる処理量の上限はブロックガスリミットと言われます。
ブロックガスリミットを大きくしたり、ブロック生成タイミングを短くすれば、処理能力が上がることがイメージできますでしょうか。しかし、これらを上昇させると高スペックなCP(コンピュータ)を用意する必要が出てきてしまいます。
そこでEthereumでは、あえて処理能力を要求しない、誰もがノード(サーバーのような役割をさせるコンピュータ)として参加できる「分散性」を優先させ、利害関係の無い人々が参加でき、一部だけの影響力を排除することで、セキュリティを向上させています。
参考:NODES AND CLIENTS
https://ethereum.org/ja/developers/docs/nodes-and-clients/
こちらのスレッドツイートも参考になります。
スケーラビリティについておさらいしたところで、Optimismの概観をしていきます。
Optimismとは
Optimismとは、Optimistic Rollupという技術をベースにしたL2ソリューションの名称です。L2ソリューションとは、雑にざっくり表現すると「Ethereumの高速処理化技術のこと」です。
同じくOptimistic Rollupを活用したL2には、Arbitrumが該当します。執筆時点でOptimism上のTVLは$661Mほどであり、L2全体では3位に位置しています。
Optimistic Rollupとは
まずは「Rollup」から把握してみましょう。
Rollupとは「バラバラのものを束ねてまとめる」というそのままの意味です。以下が参考画像です。
Stateとは、”状態”を指しており、トランザクションが増えるほど移行していきます。
L2の方でスマートコントラクトの処理を行い、Ethereumの方では演算せず記録するという形になっています。この時のEthereumは、L2と対比してレイヤー1(以下、L1)と表現されます。
Optimistic(楽観的な) Rollupは、「楽観的な」という言葉の通り、ロールアップされL1に書き込まれた時点では検証を行わず、異議申し立てのような物言い**(Fraud Proof)**が発動された時だけ検証が行われます。
シーケンサーとバリデーター
もう少し具体的に、Rollupの仕組みをみていきます。Optimistic RollupのL2チェーンに参加しているコンピュータには2種類の役割があります。
シーケンサーノード
バリデーターノード
以下、かんたんに紹介します。
1.シーケンサー
トランザクションの順番(シーケンス)の決定とブロック生成を担当します。
2.バリデーター
L1とL2を監視し、不正な書き込みがないかの検証を担当します。不正が見つかればFraud Proofを発動して、処理を無効化します。
Optimistic Rollupの課題としては、L1でバリデーターが不正なトランザクションであることを証明できなければいけませんが、毎回の検証にL1の実行結果を参照する場合、Fraud Proofのコストが高くなってしまいます。
これを解決する仕組みとしてはCannonと呼ばれています。要するに、問題となるStateを単純化された処理に組み直して実行させることでFraud Proofします。詳しくは、こちらの記事が参考になります。
参考:CANNON CANNON CANNON: Introducing Cannon
上記記事は技術的で難しいので、以下の解説スレッドがおすすめです。
以上が、Optimismの概要です。続いては「L2のガバナンスにどのような意義があるのか」について考えていきます。
L2にもたらされるガバナンス
冒頭でも触れましたが、Optimismがトークンを発行したのはどういう目的であったか確認していきましょう。
長い英文のスレッドツイートなので、いつもどおり翻訳と要約をしていきます。
ポイントは3つだと思います。3つ目が1番重要なビジョンです。
既存の高速・低ガスは分散性というクリプトの魂(ソウル)を見失っている
技術のスケールアップだけでは十分ではなく、価値観も一緒にスケールさせなければならない。この使命を追求するために、Optimism Collectiveを発表した
OSSなどの公共財を持続的な活動の支援をしたり資金調達やマネタイズの課題をクリアするビジョンを掲げ、プロジェクトのexitを支援する
トークンエコノミクスの詳細はまだハッキリとはわかりませんが、以下の図が参考になります。
Optimismに対する需要
シーケンサー(ブロックチェーンでいうマイナーのような役割)が収益を生み出す
RetroPGFというトレジャリーに保管
ユーザーや開発者へ報酬を提供
1-4を循環させる。以上のようなイメージかと思われます。
RetroPGFとは、レトロアクティヴパブリックファンディングの略です。かつてUniswspがヘビーユーザーに遡及してUNIをエアドロップしたことがありましたが、これと同じように過去の実績をもとに、すでに貢献しているプロジェクトに資金を与えようという資金分配の考え方をさします。
公共財の開発(オープンソース・ソフトウェア開発)にエグジットを与えることができ、OSSエコシステムを活発にすることができる、というのがOptimismのビジョンです。
参考:公共財にエグジットを与えるOptimismの実験
Optimism Collectiveとは
Optimismのガバナンス概要
2種類のトークンを持つコミュニティによる二院制のようなガバナンスが行われます。
左側のToken Houseでは、今回エアドロップされたFTである$OPがガバナンストークンとなります。一方、右側のCitizens Houseでは、この譲渡不可能なNFTによってガバナンスされる仕組みとなっています。
ガバナンスの具体的な内容はこちらから確認できます。Citizens Houseでは、これまでのOptimismに蓄えられた資金を原資とするプロジェクトのプロセスの管理が行われます。このCitizensになるための基準は、$OPを用いたToken Houseの投票に基づきOptimism Foundationによってこれから決定されます。
これまで、Optimismの開発に関わっていたOptimismPBCは名称変更され、OP Labs PBCとなりプロトコルの構築と分散化、および製品とビジネスの開発によるエコシステムでのプロジェクト成長のサポートに重点を置いていくとしています。Optimism Foundationは、OP Labs PBCから離れて、より広範なOptimisticエコシステムに向けて権限を委譲するための重要な最初のステップといわれています。
なぜガバナンスが求められるのか
ここまでL2を肯定的にまとめてきましたが、L2の懸念事項を挙げてみます。そうすることで、「ガバナンスがなぜ求められるのか」が見えてくるはずだ、と思うからです。
L2の懸念事項としては、以下の2点を例に挙げてみます。
Upgradeablity(アップデート可能性)
Validator Failure(バリデーターの故障)
Upgradeablity(アップデート可能性)
これは、L2のコードがアップグレードして新しくすることが可能であるかどうか、という意味です。
デプロイしているコードをアップグレードすることができれば、開発運営(Optimismの場合、OP Labs PBC)がTVLの資産を共謀して横流しするようなコードにアップグレードすることが理論上可能です(いわゆるゲートウェイコントラクトの問題)。
アップグレード可能にする目的としては、問題が発生した時にすぐに修正ができるようにしているためであると思われますが、この部分に管理者に対するトラストの問題があります。
補足※ブロックチェーンにデプロイされたコードを書き換えることはむずかしいですが、新しいコードを作りそっくりそちらを利用するようなリプレイスは実現可能のようです。
Validator Failure(バリデーターの故障)
バリデーターとは、不正がないか検証するコンピュータでした。バリデーターが検証できなくなり、故障してしまった場合、何が起きるのかというと「資金凍結」です。バリデーターは中央集権的な運営がされている場合、復旧は運営任せになります。
バリデーターの運営に何らかのインセンティブによる分散性があれば、ブロックチェーンのように単一障害点をもたないというメリットを得ることが可能かと思われます。
L2の管理者へのトラスト構造とガバナンスの意義
上記2つの懸念事項を前提に、もう一度Optimismをみていきます。
OptimismのUpgradeablity(アップデート可能性)はYesとなっており、コードの入れ替えが可能です。また、Validator Failure(バリデーターの故障)についても現状「No mechanism」となっていますので、資金凍結の可能性はゼロではありません。
上記の懸念事項の根本には、管理者(オペレーター)に依存しているというトラスト構造があるといえます。
参考(HashHub有料レポート):レイヤー2トラスト構造 誤解と現状の整理
ここで重要となるのが、ガバナンスです。
筆者は、Protocol全体の方向性のコミュニティによる分権化されたガバナンス、バリデーター運営などの仕組みの分散性をもたらすことができれば、少なくとも将来的な管理者(オペレーター)への依存状態を防ぐ方向へ改善することができるのではないかと考えています。
したがって、L2におけるコミュニティによるガバナンスへの移行は、管理者(オペレーター)に依存するトラスト構造から脱却をするためのステップとして重要な意義があるのではないか、と思います。
上記の懸念事項は、Optimism以外のL2にも共通する部分がありますので、今後ArbitrumやZksyncなどでもトークン発行が行われる可能性があるかも知れません。
参考記事を以下に掲載します。
Introducing the Optimism Collective - Optimism公式
How to get ready for L2 tokens - Bankless
レイヤー2トラスト構造 誤解と現状の整理 - HashHub Research[有料]
ブリッジの重要性・危険性について解説する【Ethereumの基礎講座】 - manablog
(Almost) Everything you need to know about Optimistic Rollup - paradigm
レイヤー2の現状とOptimistic RollupのFraud Proofを行うCannonの概要 - HashHub Research[有料]
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本日のMain Topicは以上です。
今回はGWのためWeb3 TopicsとWeekly Podcast、読者コーナーはお休みです🙏
最後までお読みいただきありがとうございました。
GWいかがお過ごしでしょうか。Twitterを見る限り、つくづくクリプトを愛する人々に休日は存在しないように思えて仕方ありません。
このニュースレターでは、いつもはニュース紹介とポッドキャスト紹介を行っていますが、文量として読者に負担になっているのではないか?という疑問も感じているところです。今回くらいの文量の方が読みやすいですか?
ぜひコメントいただければ改善させていただきたいと思いっていますので、よろしくお願いいたします。
それでは、また。
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