このニュースレターでは、Web3に興味のある方、Web3関連の情報収集を効率化したい方に向け、話題のプロジェクトやトピックをやさしく解説していきます。毎週水曜日朝6時に配信しておりますので、情報収集にぜひお役立てください。クリプトを楽しみながら一緒に学習していきましょう。
今週は前回に引き続きSoulboundについてです。
先週は、なぜいまSoulboundなのか、そもそもSoulboundとは何か、という点を整理しました。まだの方は、ぜひご覧ください。
以下、Main TopicのSummaryです。
Summary
Soulは個人の人格や評判、人物像などを表し、Soulに紐付いて発行されたトークンがSoulbound Token(SBT)である、SBTは譲渡することができない
SBTのユースケースとしては、カルテのような医療記録の管理、オンチェーンでの無担保資産レンディング、シビルアタックからの保護などがある
SBTといえどもセンシティブな情報は公開したくない情報を含んでいる場合もあり、プライバシーは課題となっている
SBTは教育・HR分野で活躍できそう
それでは、今週もよろしくお願いいたします!
Main Topic:💙Soulboundとはなにか【後編】
Soulbound Tokenのユースケース
Soulは個人の人格や評判、人物像などを表し、Soulに紐付いて発行されたトークンがSoulbound Token(SBT)でした。SBTは譲渡することができません。
この特徴を使ってさまざまなユースケースが検討されています。ここでは、3つ紹介します。
医療記録の管理
病歴や手術歴といった情報は、当然ながら個人によってひとつひとつ異なるものであり、この情報が正確に共有されることが、その後の治療に大きく影響を与えるであろうことは想像できるかと思います。
医療機関Soulが発行する手術歴SBTを患者Soulが受け取り、保持していれば、別の医療機関を受診した際に、SBTにより瞬時に治療のための医療記録を共有できることになります。要はカルテのオンチェーン版という感じでしょうか。患者は自分が受けた治療を医学レベルで理解していることはほとんどないでしょう。
現在では、別の病院を紹介されて受診する際は、「紹介状」などという紙もしくは電子のデータを医師より提供してもらい、受診先の医師に提出します。
医療記録をSBTとして管理することができれば紹介状は必要なくなるのかもしれません。また、保険会社による給付査定の際にも活用できる可能性があります。
オンチェーンの無担保資産レンディング
トラディショナルな金融における貸付は、資産や返済能力などの「信用調査」の上に成立しているかと思います。一方DeFiのレンディングでは、過剰担保によるレンディングが主流かと思います。
現在のDeFiが過剰担保を要求するのは、貸出相手の信用調査が不可能だからですが、これこそがDeFiの画期的な部分です。つまり、個人を信用する必要はなく、スマートコントラクトを信頼すればよかったからです。
しかし、過剰担保を求めるレンディングプロトコルでは、コントラクトにトークンをロックする必要があり、そのレンディングプロトコル自体のコントラクトリスクやハッキングリスクを負うことになります。また、ボラティリティの大きい暗号資産市場ではしばしば担保資産の価格下落による清算が起きています。
これがSBTによって証明できる評判や信用によってレンディングを行う相手を限定することができたらどうでしょうか。または、Dappsを使わずともSBTにより返済能力を客観的に判断できるようになることができるとすればより効率の良い資本の移動が可能になり、流動性が高まります。
現実世界の資産や返済能力をどのようにオンチェーンのSBTに紐づけるかはむずかしい部分もありますが、SBTを活用すればDeFiにおける「無担保融資」が実現できる可能性があります。
シビルアタックからの保護
シビルアタックとは、DAOのガバナンス投票権を一部のグループがトークンを買い占めたり、偽のアカウントを作成することによって、51%以上のトークンを保有して自分達に有利な提案でDAOを操作してしまうことをいいます。
もし、競合関係にあるDAOが存在しているならば、DAOの戦略としてガバナンストークンを買い占めるといったことは起こり得ます。
実際、OptimismはOPトークン発行時に、エアドロップを不正利用しようとしているウォレットアドレスを調査し、1万7,000件のシビルアドレスを削除し、そこに配布されるところであった1,400万以上のOPトークンを回復したと発表しています。
SBTを活用すると、この調査は一目瞭然にわかります。Soulのないアカウントを配布対象から除けばよいのです。また、Soulの相関性をチェックすることができ、それに応じて投票の重みを変更することが可能です。これによって、シビルアタックのリスクを軽減するメカニズムを内蔵することができます。
その他のユースケース(DeSocへのマイルストーン)について以下に列挙しておきます。
経歴の立証
レピュテーションによる無担保融資市場の活性化
協調的な戦略的行動の阻止、補償
分散化の測定
棲み分けできる、権利と許可が共有された、新しい市場の創造
(Coinpostより引用)
ユースケース参考
Soulboundとプライバシー
譲渡できるトークンのプライバシーを守るのは想像しやすくわかりやすい例です。一般的に、tornado.cashなどを使って資産のプライバシーを向上させることができます。
SBTといえどもセンシティブな情報は公開したくないですし、公にされることで不都合な情報もたくさんあるでしょう。
Vitalik氏のブログでは、秘密にしたい情報のインデックス、あなたのアドレス、あなたの秘密鍵の3つの情報をもとにハッシュ値を計算し、あなたの秘密鍵を持っている人には情報を閲覧する権利を与えるといった手法やZk-SNARKを用いた手法があげられていました。
参考:「ゼロ知識証明」の基礎理解:プライバシー保護とスケーラビリティ向上
※補足:ゼロ知識証明とは、ある証明したい事項が「真実である」という情報以外を伝えずに、その事項が真実であるとを相手が検証できるプロトコルのことです。
ユースケースで触れた医療記録を例にすると、医師以外の他人に医療記録を見られていいと思う人は少ないでしょう。ウィルスのワクチン接種証明をオンチェーンで証明したい場合であっても、時と場合があるはずです。
論文では、プライバシーをユーザーにとって都合のいい形で実現するためには、プライバシーを中心に据えながら設計を行うことで回避していく、というのが大きな方向性のようです。プライバシーは課題として捉えられています。
個人的に考えるSoulboundの教育・HR分野への活用
現時点でSoulboundの最も適した活用すべき領域は、「個人の人格や経歴に紐付いた公に証明してよい情報」だと考えています。
個人的に考えるのは、教育やHR(Human Resources)分野への活用です。教育については、先の例で触れたとおり、大学Soulが卒業証明書SBTを発行し、卒業生がSBTを保持することで学位を証明する事例です。
この事例以外にも、資格試験に応用可能だと思っていて、たとえばTOEICのスコアをSBTとして発行することも可能でしょう。HRビジネスでいえば、求職者(就活生)が履歴書に書いていることが、本当かどうかといったこともSBTであれば調査や証明書類の提出などもいりません。
現状のHR分野の問題点として、提出された履歴書の内容や相手の人柄・評判(ネット上も含む)が本当なのかどうかが、面接を繰り返していくまで分からないところだと思っています。SBTを活用すればある程度の信頼をブロックチェーンに任せることができます。
ビジネスとして成立させるのであれば、ビズリーチのように求職者(就活生)と企業のどちらからも、SBTを発行したり、利用(情報照会)したりすることに手数料を受け取るというモデルが考えられます。オンチェーン上にある譲渡されないNFTによってスキルや経歴を証明することができれば、ソフトウェアエンジニアであればあらかじめ誰でも受けられるようになっているゲームのようなテストをクリアした際に入手できるSBTは、実際の経済活動である求職や採用をDXさせるものであると考えています。
また、いわゆるLearn To Earn(L2E)分野とも相性が良いと思っています。日本でL2Eで有名なのはPoLですが先日M&Aがあり、現在も拡大している市場です。
このビジネスによって解消されるのは、学歴詐称、経歴詐称といった問題とネットの情報だけでは人柄が分からないという情報不足です。インターネットネイティブでありながらも人格や評判を確かな情報として取得・提供することができる、というのはこれまでのHR分野で提供されてきた情報の中でも異質なものとなれる可能性があると考えています。
このコンセプトをどのような技術で実現するかが問題ですが、いつか、自己申告の履歴書だけでは、全く信用されない社会が来るかもしれません。
本日のMain Topicは以上です。
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読者のコーナー
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先週のニュースレターは、大変ありがたいことに反応がいつもより多くありました!Soulboundの概念は、より多くの方に知ってもらうことに少しでも貢献できれば嬉しい限りです。
スマコンの実装という観点でのコメント。技術的に非譲渡性はそこまでむずかしくないのでしょうかね。いつも学びになります。
SBTは特にNFTと相性良さそうです。まだまだ先の話になりそうですが、活用事例が出てくるのか楽しみですね。
とてもシンプルにお褒めの言葉をいただきました。こういうシンプルなのが実は嬉しかったりするのですよね。ありがとうございます!
引き続き、皆様の役に立ち、学びとなるような情報をお届けできればと思っています。よろしくお願いします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
Web3が金儲けに走りすぎているという話からはじまったのに、最後はビジネスの話になってしまいました。笑
とはいえ、Soulboundで語られている今のWeb3に対するアンチテーゼの本質は、Web3の一般的な批判の話はVC支配や投機的市場の過熱などを否定する意図ではなく、猿の絵の売買とゲームよりも社会にとって実益のある力(パワー)がクリプトにはある、というメッセージです。
その意味で、クリプトやブロックチェーンを活用した技術により人類の問題解決、さらなる発展につながるのであれば、そこまで否定されるべきものではないのかな、と思っています。
それでは、また。
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