ニューヨーク証券取引所に、ETHスポットETFのバナーが掲示されるという歴史的イベントがありました。
https://x.com/teddyfuse/status/1816590457230766507
今週は、ETHスポットETFの取引の現状と裏側を解説します。Deep Diveでは、TOYOTAが発表したパブリックブロックチェーンを活用したモビリティの未来について検討しました。結論からいえば、エコシステムに新しい流れが来ていることを感じますが、課題も多そうだなと。どのように解決されていくのかが楽しみです。
暗号資産、パブリックブロックチェーンの最前線から重要トレンドを解説するニュースレターDIVE INTO CRYPTOへようこそ!投資家や開発者のコミュニティに飛び込んでみてください🧑💻🚀
月額7ドルで、プロフェッショナル目線のインサイトを言語化し、暗号資産・ブロックチェーンの恩恵から個人としての生存戦略のために必要な情報を発信しています。詳細は以下の記事をご覧ください!
⛓️ Resources
Spot Ethereum ETF trading volume cools in third day, falls under $900 million
Announcing Jito Restaking: A Next-Gen Infrastructure Platform
Monad liquid staking platform aPriori hits $100 million token valuation with seed funding
Arbitrum Foundation’s proposal to deploy Orbit chains beyond Ethereum opens for initial vote
1️⃣ Spot Ethereum ETF trading volume cools in third day, falls under $900 million
EthereumスポットETFの取引が、米国で開始されました。3日間までの累計取引量は約8億5,000万ドルでした。事実売りのため、Ethereumの価格は下落しています。また、ETFもネット流出が続いています。
以下は、商品ごとのネットインフローです。GBTCのようにGrayscalのETHEの流出が大きなっています。
背景を説明すると、Grayscaleは、従来のETFを発行する前に、ETHE(Grayscale Ethereum Trust)を使用してETHに投資する信託を立ち上げていました。この信託は償還することはできませんでした。
Grayscaleは、この信託をETFに変換しましたが、手数料を高く設定したままでした。ETHEに対しては2.5%、GBTC(Grayscale Bitcoin Trust)に対しては1.5%の手数料を課しています。これは競合他社の中で高い手数料です。
ETFが市場に登場すると、投資家にはGrayscaleの高額な手数料のETFを売却し、他の低手数料のETFを購入するインセンティブが生まれました。その結果、GrayscaleのETHEから資金が流出したものと考えられます。
このような流出は必ずしも悪いことではありません。市場は高額な手数料を課すETFを排除していると見ることができるからです。各ETFのティッカーと手数料の一覧は以下が参考になります。
一方で、EthereumのETFは、規制の観点からステーキングを行うことができません。つまり、ETF保有投資家は、3〜5%ほどのステーキング報酬を受け取れません。少なくとも短期的には、Ethereumに投資する個人投資家層はリキッドステーキングを活用することも考えるでしょうから資金流入はビットコインよりも弱くなるのは想定通りだったといえるかも知れません。
長期的には、ETF取引が解禁されたので、より大きな資金がETHに流入する可能性を開くことができたことになります。1〜2年でETHの価格を大きく左右する変数になる可能性は高いと思います。
2️⃣ Announcing Jito Restaking: A Next-Gen Infrastructure Platform
SolanaのリキッドステーキングトークンプロジェクトのJitoがRestakigプロトコルのコードを公開しました。VaultとRestakingの主要なコンポーネントで構成されます。ユニバーサル型なので、SOL以外のSPLトークンを扱うことが可能なようです。
簡単に要約すると、
Vault:LRT発行
Restaking:AVS(Actively Validated Services)のマネジメント
という仕組みです。LST発行体が、LRTとRestakingをどちらもやってしまうという格好です。
具体的なAVSとしては、Solanaのオラクル情報を提供するプロジェクトとしてORCLという仮想のプロトコルが紹介されています。
リステークによって、委任を受けたオペレーターは、正しい価格情報をDeFi プロトコルに提供します。間違った情報を提供した場合、委任されたステーク資産がスラッシングされるため、この資産を担保に正しいオラクル情報の提供が動機づけされます。
ORCLがガバナンストークンを出していると、jitoSOLとのデュアルステーキングモデルによってよりネットワークの安全性を保護することができるシステムのようです。
ステーキングされたガバナンストークンとLSTに対して、LRTトークンが発行されるのでユーザーは他のDeFiプロトコルで運用できます。
Pudgy Penguinsの運営企業Iglooがピーター・ティールのファンドから1,100万ドルを資金調達したという発表です。Iglooは、Cube Labsを立ち上げてコンシューマー向けのL2であるAbstractの開発に取り組むとのこと。
Abstractは、元zkSyncのマイケル・リーによって共同で開発されており、Matter Labs(zkSyncの開発運営元)やIglooのCEOのLuca Netzなどが参加しています。
Abstractは、ZK StackとよばれるRaaS(Rollup as a Service)とEigenLayerのDAプロジェクトであるEigenDAを使用するプロジェクトです。コミュニティと文化を構築すること、ビルダーのインキュベーターを設置して強化するようです。
個人的に、コンシューマー向けで最も成功しているNFTプロジェクトのひとつだと認識しているので、注目しています。
4️⃣ Monad liquid staking platform aPriori hits $100 million token valuation with seed funding
高速レイヤー1のMonadのリキッドステーキングプロジェクトであるaPrioriが800万ドルをPantera Capitalのリードで調達しました。
aPrioriは、元Jump CryptoのRayと元CoinbaseのOliviaによって開発され、ステーキングとMEV報酬を組み合わせたリキッドステーキングトークンのプラットフォームを構築しています。これは、JitoSOLと同じです。
Monadはまだメインネット展開前です。独自トークンについては、まだタイムラインは決まっていないとしています。
合成ステーブルコインであるUSDeを開発するEthenaが、準備金資産の割り当てについてプロポーザルの募集を開始しました。既に、BlackRockのBUIDLやSteakhouse USDCが提案されています。
申請者は、EthenaにRWA(利回り付き資産)の割り当てを提案することが求められており、Ethenaの4,500万ドルの準備金と、USDeの2億5,000万ドルの割り当てを受ける資格を得ます。
適切なリスク評価を行いつつ、準備資金などを活用してRWAの収益をEthenaにもたらすことができれば、プロトコル収益の基盤がより強固になります。
収益性は、ガバナンストークンの評価にも影響を与える強力なドライバーのため、Ethenaが順調に成長する基盤が整えばガバナンストークンENAにもその恩恵が現れるのではないかと期待しています。
6️⃣ Arbitrum Foundation’s proposal to deploy Orbit chains beyond Ethereum opens for initial vote
Arbitrumのガバナンスフォーラムで、Arbitrum OrbitをEthereum以外のチェーンに拡張するかどうか議論されています。
Arbitrum Foundationの提案内容によれば、Bitcoin、BNB、CosmosなどにOrbit chainを対応できるようにするとのこと。
Orbit chainの利益の10%はArbitrum DAOに分配されており、今回の提案はEVMの改善版であるArbitrum Stylusのマルチチェーンでの拡大ができる可能性が示唆されています。
8/1までの温度チェックでは、99%が賛成している状況です。
7️⃣ Coming Soon: AVS Rewards and EIGEN Programmatic Incentives
EigenLayerが、AVS(Actively Validated Services)に対するステーキングとオペレーターに報酬を提供するメカニズムを近々導入することを発表しました。今までは、Eigenポイントだったのでやっときた、という印象です。
これにより、EIGENトークンの総供給量の少なくとも4%がステーカーとオペレーターに配布されるようになるとのこと。
この図をみるに、AVSからの手数料報酬は、ステーカー(LRT)に9割、オペレーターに1割という配分になっています。オペレーターは、いくつものAVSの検証作業に参加すれば、それだけ報酬も増やすことができます。
ステーカーとしては、できるだけ多くのAVSの検証作業にあたるAVSにリステーキング資産をデリゲートすることで利益を最大化できます。一方で、スラッシングリスクも増大しますのでトレードオフになります。
EIGENトークンが各AVSによって分配される報酬の量に比例してステーカーとオペレーターに自動的に配布されます。AVSがより多くの報酬を分配するほど、ステーカーとオペレーターはより多くのEIGENを受け取ります。
また、今回とは別にEIGENトークンのシーズン2も始まる予定です。
🔵 From Community
もしこの記事を気に入っていただけたら「いいね・Xでのシェア」を頂けたらとても嬉しいです。質問や感想はSubstackでコメントをください(有料購読者限定🔐)。
Xでいただいたリプライや感想をニュースレターで紹介しています。読者の声を聞かせてください!
🫧 Deep Dive
TOYOTAが描く、ERC-4337を活用した未来のモビリティ社会
Toyota Blockchain Labから、「 How to Introduce Mobility into the Public Blockchain(パブリックブロックチェーンにモビリティを導入する方法)」という記事が公開されました。今回は、要点を解説しながら所感をまとめます。
結論から言えば、エコシステムへの貢献のベクトルの変化を感じました。今回のDeep Diveでは、「なぜそのような結論に達したのか」についてまとめます。
バックグラウンド
トヨタでは、モビリティ3.0と呼ばれるモビリティ(移動手段やそれに関わる社会インフラ)と社会システムの融合を目指しています。
この文脈では、モビリティは単なる乗り物だけでなく公共性のある存在としてとらえます。パブリックブロックチェーンはそのコンセプトの実現の有力な選択肢となると考えているようです。
今回のコンセプトを要約すると、パブリックブロックチェーン上に乗り物の情報を集約する乗り物コントラクトアカウントMOA(Mobility-Oriented Account)、この使用権を表すKeyToken(ERC-721)コントラクトを使用して、モビリティに関する社会インフラに実装しようとするものです。
この2つを軸にして、以下より詳細を解説します。
Keep reading with a 7-day free trial
Subscribe to Lawrence's Newsletter to keep reading this post and get 7 days of free access to the full post archives.