不動産などの担保資産によって100%以上の裏付けをされていたにも関わらず、USDRというドルステーブルコインは50%以上下落しデペグした。
取り付け騒ぎが発生したのは日本時間昨夜、一体何が起きたのか?
この記事では、USDRがデペグした原因を明らかにするとともに、TangibleDAOが目論んだUSDRの仕組みの問題点を解明する。
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不動産担保ステーブルコインUSDRがデペグした原因とは
🏚️USDRとは
USDRとは、TangibleDAOがPolygonで発行する不動産担保型のステーブルコインだ。
不動産担保型といっても、その担保資産の内訳は様々なデジタルアセットによる。以下は取り付け騒ぎが発生(DAIの枯渇)した直前の内訳。
担保資産の内訳詳細👇
TNGBL:TangibleDAOの独自トークン
Insurance fund:今回のような100%の償還を補填するための保険
3Pool LP→POL(Protocol owned liquidity):TangibleDAOがCurveに持つ流動性ペア
DAI:最大50%がUSDRの担保として保持される
R.E(Real Estate):TangibleDAOのマーケットプレイスからプロトコルによって購入された不動産NFT
TangibleDAOは、不動産やワインなどのリアルワールドアセットをトークン化して流通させることを可能にするマーケットプレイスを展開している。
USDRの担保資産になる不動産は、このマーケットプレイスからUSDRトレジャリーにあるDAIを使用して不動産NFT(TangibleDAOではTNFTという)として購入される。
この不動産は、イングランドやUKに所在地がありテナントとして賃貸に出される。この賃貸料はUSDR保持者に利回りとして支払われる仕組みだ。
一般的なUSDTやUSDCといったステーブルコインには、利回りは存在しない。USDRは、実際の収益源(賃貸・不動産価格の上昇)に裏付けされ、インフレヘッジされたRWA型ステーブルコインだと言える。
📉なぜデペグした?
結論から言えば、「担保に含まれる不動産資産の裏付けが証明されないことを懸念して起きたDAIの引き出し」によるものだと考えられる。
実際、この指摘は2023年9月1日にされている。
USDRの資産内訳をもう一度みてみる。129%の担保資産が入れられていると表示されている。
USDRの時価総額は5,000万ドル。そのうちおよそ1,500万ドルの3Poolの流動性の50%(750万ドル)のため、少なくとも約4,200万ドルを裏付ける資産が必要。
3Poolで1,500万ドル、DAI800万ドルの合計2,300万ドルだが、残り5割弱の不動産担保が確実になければ100%以上にならない。
DAIの準備金が枯渇すると、USDRの売りが激しくなる。そうすると3PoolのLPもバランスを保てなくなる。つまり、上記の約45%の裏付けを失うことになる。
残りは独自トークンTNGBLと不動産だが、独自トークンもDAIの取り付け騒ぎが起きれば価格を下げる。不動産だがChainlinkのPoR(Proof of Researve)が活用されている。ただこれだけでは、DAIの取り付け騒ぎを防ぎきれるようなものではない。
以下のPoRでは裏付け資産は4,300万ドルを超えていることが示されているが、今回のような取り付け騒ぎに発展することになった。
不動産の価値は十分に裏付けられるほどの価値があるように見えるが、なぜ取り付け騒ぎは収束しなかったのか?
ここを考察する。
🧊非流動性資産を担保とする場合の問題点
不動産は一般的に非流動性資産だといえる。すぐに売れるようなものではないし、売却や賃貸契約が成立したとしても現金がすぐに手元に来るわけではない。
このような性質を考えれば、USDRのようにユーザーが適宜に償還できるモデルの担保資産として、非流動性資産を担保にするのは不適切なのではないかと考えられる。
今回のようにDAIの準備金が枯渇してしまうと負の連鎖が起きるからだ。したがって、USDRは償還できるタイミングをある程度中長期的に置くビジネスモデル、もしくはローントゥバリューを引き下げ担保価格よりも少ない割合でUSDRを発行することが望ましかったのではないかと思われる。
一般化する。非流動性資産をRWAとしてトークナイズする場合、償還できるタイミングは慎重に決定しないと今回のような問題が発生する。
RWAを担保として活用すること自体に問題はないが、トークナイズと償還のバランスを保つモデルを維持できなければUSDRのように成立しなくなる可能性があることを認識しておく必要があるのではないだろうか。
上記はRWAを活用する場合の留意点になるのではないかと思う。
本日は以上です。
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