今回は、分散型SNSの話題です。分散型(Decentralized)SNSとは、TwitterやFacebookとは異なり、中央管理者が存在せず、ユーザーが投稿した記事や写真などのコンテンツはIPFS(分散型ストレージ)に保存できたり、NFTなどのトークノミクスを組み込んだ機能といった特徴のあるソーシャルメディアの総称です。
Lens Protocol(レンズプロトコル)は、AaveというDeFiでは有名なレンディングプロトコルのチームが開発しており、Polygonで利用することができます。この記事を書いている時点ではPolygonメインネットにはこれからローンチ予定です。
Main Topicでは、Lens Protocolの前提となる仕組み、プロトコルの概要を解説していきたいと思います。
1.Main Topic:Web3ソーシャルグラフを提供するLens Protocol
CulinarisというLens Protocolのシンボルキャラクター(出典:https://mirror.xyz/lensprotocol.eth/YG9iFIs2emVFRtj3JqY95Dk6opNqM0aC9YoM-Ppp5as)
前提
DeFiプラットフォームAaveがPolygonで発表したLens Protocolとは、公式ブログによれば、以下のように紹介されています。
The Lens Protocol is a permissionless, composable, and decentralized social graph that makes building a Web3 social platform easy.
Lens Protocolは、パーミッションレス、コンポーザブル、分散型のソーシャルグラフで、Web3のソーシャルプラットフォームを簡単に構築することができます。
☑️Lens Protocolの特徴
パーミッションレス=管理者の許可の許可を必要としない
コンポーザブル=開発機能の追加、相互運用性
分散型ソーシャルグラフ=中央管理者不在のインターネット上の人間関係を図式化した情報
Web3ソーシャルプラットフォーム=トークンでのオーナーシップ(所有)や持続可能な活動ができるSNS
従来型のWeb2のSNSと比較して考えるとLensの特徴が見えてきます。Lensは、OSS(オープンソースソフトウェア)なので、誰でもその仕組みを活用することができ、管理者からの許可を必要としません。つまり、Facebookのようにアカウント登録は存在せず、ウォレット接続だけで利用開始できます。
☑️Lens Protocolでできること
ユーザーは、NFTをベースにしたプロフィールの作成、フォロー、コンテンツの投稿、ミラー(リツイート)などの機能が利用でき、これらをNFTとしてオンチェーン(ブロックチェーンに情報を記録すること)で、管理できます。
従来のソーシャルメディアでは、投稿したコンテンツは、プラットフォーマーの管理するサーバーに保管され、自由に取り出したりできず、サービスが終了した場合はデータが消失してしまいます。
より具体的なイメージは以下の概要で「Lensで何ができるのか」について解説していきますので、そちらで理解していきましょう。
概要
出典:https://docs.lens.dev/docs/overview
プロフィール作成(Profile)
コンテンツ投稿(Publication)
コメント(Comment)
リツイート(Mirror)
コンテンツ収集(Collect)
フォロー(Follow)
ガバナンス(Built-in Governance)
コミュニティ(Community Multisig)
公式ドキュメントで公開されている主な機能のコンセプトは8つあります。ここでは、代表的な機能を紹介します。
👥プロフィール作成(Profile)
プロフィールはNFTとして発行でき、Lensの中心的な機能です。個別のウォレットアドレス単位でプロフィールNFTを発行でき、所有することができます。複数のプロフィールを一つのアドレスで所有することもできます。
このプロフィールNFTには、後述して紹介する「コンテンツ投稿」、「リツイート(Mirror)」といったあなたがLensに生成したコンテンツの全ての履歴が含まれます。この点が、Web2のSNSとは大きく異なる点です。
DAOのプロフィールとしても活用できるように、マルチシグ(共同署名)が必要なウォレットアドレスでも運営可能です。
📑コンテンツ投稿(Publication)
ユーザーが投稿できるコンテンツは「Publication」という名前がついています。ブログ、写真、音楽(音声)、動画といったあなたが作りたいコンテンツを生成し、共有することができ、IPFSをサポートしています。
PublicationはユーザーのプロフィールNFTに紐付き、URI(Uniform Resource Identifier)が含まれているので、分散型ストレージ上のコンテンツの居場所を指し示します。
Publicationにはコンテンツに誰がコメントやリツイート(Mirror)ができるかを限定することができます。フォローNFTを持っている=フォロワーのみが、コメント・リツイートができるといったことも可能です。
🧭コンテンツ収集(Collect)
Collect機能は、ユーザーのマネタイズを可能にします。コンテンツはLens Protocolを介してユーザーが保持しているからです。フォロワーNFTを保有しているユーザーに対し、自分のPublicationを購入してもらうことが可能です。
クリエイターはCollectできる期間を限定にしたり、特定の数しか配布しないといった設定が可能です。開発者であれば、この限定機能を追加していくこともできます。この点がコンポーザブルである点です。
🌐フォロー(Follow)
あなたが誰かをフォローすると、「フォローNFT」が発行されます。これは固有IDを有しており、たとえばフォロワーが初期からフォローしていたユーザーかどうか、オンチェーンで記録されます。
つまり、ガバナンス投票を行う際に、ID1〜100までの人だけが投票できるといったことも実現できます。フォローNFTの取得(=フォロー)に価格設定することも可能です。さらにこのフォローNFTはオープンマーケットプレイスで取引することもできます。
たとえば、「セレブリティの初期フォローIDのフォローNFT」は、そのセレブリティを応援するファンからすれば高値で手に入れたいものになるかもしれません。
🗽ガバナンス(Built-in Governance)
Lensでは、DAOツール機能があります。また、フォローNFTを保有している相手にガバナンスの委任をすることができます。委任は非アクティヴなので、ガバナンスに参加する場合は、信頼できるユーザーに委任をする操作が必要です。(具体的な操作方法は明示されていませんでした。)
☑️Lens ProtocolのDAOツール機能
プロポーザルの作成
ある時点でのフォローNFTを保有者限定の投票の起案
提案の実行
これらはあくまで一例にすぎないので、さまざまな用途を開発して組み込んでいくことも可能なのだと思われます。
保有者限定の投票は、フォローNFTを手に入れる動機づけにもなるので、インセンティブ設計を考えDAO構築に役立てることできるでしょう。
Lens Protocolの総括
出典:https://docs.lens.dev/docs/primer
今回はDecentralized SNSをめざすLens Protocolについて紹介しました。すでに存在している類似プロトコルとしては、ICPのDistrikt、日本ではHiÐΞプロトコルも少し近いかもしれません。
Lensの特徴は、プロフィールNFTを活かしたトークンエコノミー、フォローNFT・Publicationでのユーザーのマネタイズ、コミュニティ形成、NFT保有者限定の投票機能などでしょう。
分散型ストレージを使っていることだけに魅力を感じるユーザーよりも、プラットフォームやそこを利用しているユーザーとコミュニティ自体に魅力を感じることができなければ、こうしたプラットフォームは、乱立しては消えていくWebサービスと変わらないもの、と筆者は考えています。
2022年はDAOがかなり注目されている年なので、こうしたDAOツール系のプロトコルはさらに増えるでしょう。そのなかでもユーザーが求めているUXをユーザよりも先に認識し、言語化してプロダクトに組み込んだプロトコルが選ばれていくことになると思います。そういった意味で、どのようなUXを提供できるのかLens Protocolに注目していきたいと考えています。
なお、DiscordではEarly Userのロールを配布しているようです。現在は配布が停止されているようですが、今後トークン発行などがあった場合を考え早めに押さえたい方は、Discordに参加してアナウンスを注意しておくといいかもしれません。ただし、スキャムには注意してください。
🔗参考リンク
ドキュメント:https://docs.lens.dev/docs
Website:https://lens.dev/
Blog:https://mirror.xyz/lensprotocol.eth/YG9iFIs2emVFRtj3JqY95Dk6opNqM0aC9YoM-Ppp5as
Twitter:https://twitter.com/LensProtocol
2.Web3 Topics
2022年の業界考察、明けましておめでとうございます|Tomohiro Tagami / 田上智裕|note
株式会社techtec 代表取締役CEOの田上さんの2022年の業界考察です。株式会社techtecは、「PoL」というクリプト学習サービスでも有名です。
クリプトの全体を外観するにはとてもいい記事だと思います。少し前の記事で恐縮ですが紹介いたしました。情報収集は誰が発言している情報かを考えて取得すると効率がいいと思います。ただし、情報の中身については鵜呑みせず、検証・批判する姿勢は持つべきだと思いながらリサーチしております。
Web3 Jobs: クリプト業界で仕事を得る方法(2022年版) - by Crypton - Workless
Messariの記事の日本語訳です。元記事はこちら。ぼくは本業でクリプトにまったく関連の無い業種なのですが、ここまで没頭してしまうとさすがに本業にしてしまった方がいいなと考えるようになり、この記事に興味を惹かれました。
DAOコントリビューターとして行動してみるなど、とりあえずこの記事のなかにあり、自分ができそうなことをやってみるのがいいのかなと思います。
現時点では、仕事につながるというよりも応援したいプロダクトを勝手にアンバサダー的に応援したりして、情報発信などのお手伝いをする程度で仕事としては成立していません。情報収集として、HashHub Researchのカジュアル面談でリサーチャーの仕事を聞いてみたりと、具体的に自分が価値を発揮できる領域を模索しているところです🙇♂️
もし同じような境遇の方がいらっしゃれば参考になるような記事だと思います。
イーサスキャン (Etherscan) を触りながら理解しよう【NFT販売あり】
みなさん、イーサスキャンって理解できますか?ぼくは恥ずかしながら全く理解できなかったので、この記事がとても参考になりました。
イーサスキャンとは、イーサリアムのトランザクションの詳細(いつ、誰が、どれくらい送金したのかなど)な情報を閲覧できるサイトです。これを読み解けば、トランザクションをした際のコントラクトの中身もみることができ、どのような仕組みでブロックチェーンの情報が記録されているのか解読することができます。
技術的な話は極力削ぎ落としたシンプルな言い回しでとてもわかりやすいので、ぜひ参考にしてみてください😌
3.Weekly Podcasts
先週までに放送したクリプトに関連するPodcastです。メディア、コミュニティ運営の取り組み、仕事などの雑談をしている回はこちらから。
音声で学習効率をアップにお役立てください🎧
#402 DAOは長期的なものか、短期的なものか。
メディアでは「自律分散型組織」という言葉ばかりききますが、少しも具体的にイメージを捉えることができないので、自分で具体例を参考にしながら考えていくことにしました。
今年はDAOと称する色々なコミュニティ、その中には普通のオンラインサロンも存在していることでしょう。もし自分が参加するならどのようなDAOならいいか、どんな貢献ができるか、と考えてみるきっかけになれば幸いです。
#403 FTX、Liquidグループ買収で日本市場参入
大きめな買収だったのでとりあげました。日本の仮想通貨取引所はそのうち海外資本に買収されていってしまうのでしょうか…。
海外資本家たちが日本の規制を理由に市場参入できなかったイメージがありましたが、こうした買収であれば結局日本人向けにアプローチできるんですよね。
#404 StakeTechnologies渡辺さんとCoincheck大塚さん
スタートアップの資金調達に関するエモいストーリーです。Stake Technologiesは日本発のパブリックブロックチェーンAstar Networkなどを開発している企業です。
渡辺さんと大塚さんは2年ほど前にある出会いをきっかけに親交を深め、今回の資金調達に至りました。ワクワクするようなエピソードでしたので今回、最もおすすめの放送回です📻
#406 MetaMaskのRPCってなに?
ウォレットの王様として名高いMetaMask。しかし、設定画面でRPCの入力はしたことがあるけど、「一体何なのか?」と考えている方もいらっしゃると考えて取り上げました。
1番よく理解していなかったのはぼくなので、なるべく技術的な話も噛み砕いて話してみました。ぜひご視聴ください。
4.注目コンテンツ
HashHubでカジュアル面談をしてもらったら記事にしていただきました。
Solanaのbridgeで有名な「ワームホール」で大規模なハッキングがありました。
bridgeについて基本的な仕組みを理解するためにちょうどいい記事がありましたので、ぜひご覧ください。
5.読者のコーナー
前回のニュースレターで紹介したEthereumにリネームの話題についてシェアして頂きました。
Web3では、むずかしい操作感やGOXの危険性、スキャム回避の知恵といったある種のスキルが必要なのが現状でしょう。
このあたりは少しずつですがUXが改善されていくことになるのではないかな、と考えています。ヤスヤスオンファイヤーさん、シェアありがとうございました🙇♂️
みなさまぜひ記事がいいなと思っていただけましたらTwitterでのシェア大歓迎です。アウトプットにご活用ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
突然ですが、みなさんは自分の興味があって知的好奇心がくすぐられるような分野はありますか?
ぼくにとってはいまはクリプト領域なのですが、そうしたことが仕事や生活の一部になるとより毎日が楽しくなっていくのかなと考えています。
仮想通貨の儲け話はあまり興味がわかないのですが、クリプトに関わるテクノロジーは将来的にも生活と深く関わると考えており、今後も新しいプロジェクトが登場してしてくる分野だと思っています。
このニュースレターでは、そうしたクリプトやWeb3に関連するテクノロジーのワクワクをリアルタイムにお届けできるように継続していき、お役に立てれば嬉しい限りです。
それでは、また。