先週は、米国・日本株式市場で大きな暴落となり、暗号資産市場にも大きな影響をもたらしました。
今週は、そんな暴落相場でも特に注目しておきたいニュースを紹介し、Deep DiveではParadigmのワークショップで披露されたブロックチェーンの検閲耐性に関する新たなアプローチであるBRAIDについて触れます。EthereumやMEV関連で最先端の研究かと思われます。
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DeFi liquidations hit yearly high above $350 million in past 24 hours amid market turbulence
WiFi Provider Andrena Raises $18M to Offer Decentralized Broadband
1️⃣ DeFi liquidations hit yearly high above $350 million in past 24 hours amid market turbulence
暗号資産市場では暴落の影響を受けましたが、DeFiでは、清算額は3億5000万ドルを超え年間最高を記録し、BTCは53,000ドルを下回り、ETHは2,300ドルまで下落しました。
一方、清算が続いたことでAaveでは手数料収益が600万ドルに及んだそうです。
株式市場では何が起きていたのか
株式市場の暴落要因については諸説ありますが、おそらく以下のような要因が絡んでいると考えられます。
日本の金利引き上げ
米国経済の減速懸念
AIバブルへの幻滅期の予測
FRBの金融政策の不確実性
インフレの持続による消費者心理の悪化
日本の政策金利は、0.1から0.25%に引き上げされましたが、これを背景とした円のキャリートレードの逆回転が起きたのではないか、というのが市場のおおよその見方になっています。
キャリートレードとは
キャリートレードとは、日本円などの金利の低い通貨を借りて、ドルなどの高金利通貨で運用することで、金利差収益を得ようとする取引のことです。
日経新聞によると、2024年初から一方向に進んできた円安・ドル高の主因との見方が強とされ、日米2年物国債の金利差は1月の4.2%前後から4月には4.7%台まで拡大したとされています。
株式市場の影響から暗号資産市場が暴落したロジック
日銀の追加利上げやFRBの利下げ観測が強まり、金利差が一気に縮小し、円キャリー取引の解消や縮小が進んだことで、円高方向に動きましたが、円安傾向を前提とした日本株買いの短期トレードが逆回転して日本株市場の暴落につながりました
このため、円高が進行する局面では、米国の金利を頼っていた投資家が急いでポジションを解消することが求められ、米国市場でも大量の売りが発生することになります。
このような背景で、リスク資産の回避が行われ暗号資産市場で売り圧が連鎖し、その影響を強くしたと思われます。
2️⃣ ブロックチェーン業界で何が起こっているのでしょうか?
中国語のポストを日本語訳した記事がXで話題になっていました。
ブロックチェーン業界というよりも、現在の暗号資産およびブロックチェーン業界のベンチャーキャピタルの投資スタンスや資金循環について詳しく説明されているように見えます。
以下、要点をまとめます。
VCは今期、資金を3~10倍に拡大し、再度資金調達を行っている。手元に多くの資金があるため、多少の見込みがあるプロジェクトにも過剰に資金が投入され、評価額が上昇している。
良質なプロジェクトが不足しているため、見込みのあるプロジェクトに追加の資金調達が行われ、その結果、評価額が不自然に上昇している。これは資金を使い切るための動きであり、3年前に失敗したプロジェクトでも再度資金を調達できる状況になっている。
VCはプロジェクト側とともにLP(有限責任パートナー)を利用し、リスクを分散しているが、結果としてVCが利益を得られない場合、LPが最も損失を被ることが多い。
インフラプロジェクトは大きな評価額を伴うが、実際のアプリケーションや収入が伴わないため、自己補助金で取引量を増やそうとする。また、トークンの上場時に高い評価額を得ることを目標としており、その後のトークン価格の下落が頻繁に起こる。
以前に失敗したプロジェクトでも再度資金調達が可能であるが、実際には真のユーザーやユースケースがないため、上場しても価格がゼロになるリスクが高い。
大手取引所はプロジェクトに流動性を提供し、その対価として手数料を得ている。取引所は流動性が最優先であり、取引所にとって重要な顧客である大口投資家が利益を得るように設計されている。
特に、VCが資金を使い切るために見込みのあるプロジェクトに過剰に投資することや、その結果として評価額が不自然に上昇する状況が指摘されています。また、VCとプロジェクト側がLPを利用することで、投資リスクが分散されているものの、最終的にはLPが損失を被る可能性が高いことも述べられています。
インフラプロジェクトが高評価を受ける一方で、実際のユースケースが伴わないため、自己補助金を使って取引量を増やそうとする動きがある、とされています。
確かに、そのような印象はあります。では、既にユニバーサルに成功を収めそうなチェーンがあるかと言われればそれは少なく、Baseくらいなのではないかと考えています。
ということは、まだはっきりとした成功事例もないので、今後もインフラが開発される流れは続くのではないかと思われます。
その動きに並行してアプリケーションの投資も盛んになるようになれば、暗号資産マーケットもより面白くなるはずです。
3️⃣ WiFi Provider Andrena Raises $18M to Offer Decentralized Broadband
DePINプロジェクトDAWNを開発するWiFiプロバイダーであるAndrenaが1800万ドルの資金調達を行いました。Solanaを採用しています。
DAWNは、従来の集中型インターネットプロバイダーに依存しないブロードバンドインターネットの提供を目指しています。
DAWNプロトコルは、現在テストネットで稼働してます。
通常、家庭でインターネットを使っていると、全ての帯域幅(インターネットの速度や容量)を常に使い切るわけではありません。例えば、夜遅くや仕事中など、インターネットの使用が少ない時間帯には、余分な帯域幅が発生します。
DAWNプロトコルでは、この余った帯域幅を近隣のユーザーに提供することができ、その見返りとして収益を得ることができます。具体的には、特別な機器を設置することで、自宅のインターネットを他の人が使えるようにし、その使用料を収入として受け取ることができる仕組みです。これが主な収益源です。
ホワイトペーパーの試算によると、初期費用は、通常1年以内に回収できると見込まれており、その後は収益が得られる仕組みだとされています。
ノードとしてネットワークに参加するためには、専用の機器を購入する必要があります。この費用は約$1,000ほどかかります。
DAWNのネットワークに貢献することで、報酬としてDAWNトークンを受け取れます。この報酬は、ネットワークの品質を保つための作業を行うときに得られます。
ネットワーク帯域をシェアするのは、攻撃者から不正にアクセスされるリスクやマルウェアの拡散など非常に高いリスクが存在することが懸念されます。
Zoraは、クリエイターが作品を販売した後も収益を得られるように、Uniswapを使った二次流通モデルを導入しました。
このモデルによって、クリエイターは作品が販売された後も利益を享受し続けることができるようになります。
Zoraで作品がミントされると、そのミント期間が終わった後、Uniswapでの二次市場が自動的にスタートします。これにより、ミントを逃したコレクターでも、その後に作品を購入することができる場が提供されます。
ミント料金の一部がUniswapに投入されるため、二次市場ではすぐに取引が活発になる可能性があります。これによって、コレクターが作品を自由に売買でき、常に流動性が確保される仕組みを目指します。
クリエイターは、Uniswapで作品が取引されるたびに、自動的にロイヤリティ(収益)を受け取ることができます。これはSecondary Rewardsというシステムで、取引手数料の一部がクリエイターに還元される仕組みです。
通常、Uniswapでの取引手数料は1%に設定されています。この1%の手数料のうち、0.75%がクリエイターに、残りの0.25%がZoraに分配される仕組みです。
このモデルにより、クリエイターは作品の初回販売だけでなく、その後の二次市場での取引からも継続的に収益を得ることができるようになります。
以下の図は、Zoraで別のNFTマケプレで取引される場合と、Uniswapで二次流通する場合の比較をしたグラフです。
ユーザーはZoraのインターフェイスから直接取引を行うことができます。ZoraはUniswapと統合されているため、わざわざUniswapのサイトに行く必要はなく、Zora上でシームレスに取引を進めることが可能です。
🫧 Deep Dive
複数の提案者によるアプローチでブロックチェーンの検閲耐性を強化するBRAID:Paradigm Research Workshopより
ブロックチェーン技術が進化する中で、取引の検閲を防ぐための新しい設計として注目されているのが「BRAID」です。8月6日のParadigmのResearch WorkshopでMax Rescickから発表されました。
「BRAID」という名称が何かの略称であるか不明ですが、発表者であるMax Resnick氏が、この名前を「編み込む」という意味を持つ英単語「braid」に由来させた可能性があると思います。
バックグラウンド
EthereumのようなPoSブロックチェーンでは、取引をブロックに記録する際に「提案者(プロポーザー)」が重要な役割を果たします。
参照:https://www.coinbase.com/developer-platform/discover/protocol-guides/guide-to-eth
Ethereumのブロック生成の流れ
32ETHをステークすると確率でブロック構築できるバリデーターになれる
ブロック構築の際に、バリデーターからランダムでブロック構築をネットワークに提案できるプロポーザーが選ばれる
プロポーザーはブロックを構築し、バリデーターから選ばれるCommitteeに提出し一定数の承認を得る
承認が得られたブロックがネットワークにブロードキャストされる
しかし、この仕組みでは、プロポーザーに強い権限があり、提案者が取引の順序や内容を操作することで利益を得る「タイミングゲーム」と呼ばれる問題が発生する可能性があります。これにより、特定の取引が意図的に遅らされたり、無視されたりするリスクが生じます。
この論点については、以下の記事でも触れました。BRAIDを知るうえでインプットしておくと理解が深まると思います。
https://diveintocrypto.xyz/p/eip-7732-epbs-ethereum
BRAIDの概要
この問題を解決するために、BRAIDは複数の提案者が同時に取引を提案し、特定のリーダーに依存せずに取引を公平に処理する「マルチプロポーザーシステム」を採用しています。
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