StarknetのUniswap V4こと、Ekubo Protocolが話題だ。
その理由は、Uniswap DAOに300万UNI(およそ1,200万ドル)のパートナーシップを提案したからだ。先日の温度チェックの結果、63%の賛成で次の投票ラウンドが行われることになった。
Ekuboからは見返りに様々な提案が行われている。が、そもそもなぜいきなり出てきたEkubo Protocolに1,200万ドル分のトークンを拠出しようとされているのか?
その背景は、Ekubo Protocolの概要、創設者であるムーディ・セーラム氏のバックグラウンド、今後行われようとしているパートナーシップの目的を知ることで理解できるだろう。
今回の話題は、Xでtatsu.lensさんの投稿を見たことがきっかけだ。彼の解説も参考にして欲しい。
それでは、今回もよろしくお願いいたします。DIVE INTO CRYPTO!
DIVE INTO CRYPTOは、2024年2月より有料プランを開始します。アーリーアダプターへの感謝を込めて先着100名限定で最大50%割引きクーポンを発行します。詳細は以下の記事を御覧ください。
🧵 Table of contents
Ekubo Protocolの概要
元UniswapコアエンジニアでEkuboファウンダーのMoody氏とは?
EkuboがUniswap Governanceに提案した内容とその目的
今後の可能性と懸念
考察と所感
🗿Ekubo Protocolの概要
Ekubo Protocolは、EthereumのL2であるStarknet上のDEXだ。
Uniswap V4のシングルトン設計、Hookによる拡張、Uniswap V3の集中流動性を備えているとのこと。Limit orderやTWAMMなどは、2024年Q1までに公開される。
Starknetは、EVMで動くSolidyではなくCairoという特別な言語が用いられている。故にStarknetの処理性能に特化していることもありその性能は高い。
Ekuboのアーキテクチャが既存のStarknetのDEXよりも性能が高いことは、ローンチ最初の1ヶ月でStarknetの総取引量の約75%を占め、それはEkuboのTVLのわずか5%によって行われた。これはEkuboの流動性管理性能の高さを示しているといえる。
そんなEkuboは、将来のEkuboのガバナンストークンの20%と引き換えに、冒頭で説明した300万UNIの寄付をUniswap DAOに提案している。
このパートナーシップ提案により、UniswapとEkuboはお互いのガバナンストークンのステークホルダーになるだけでなく、開発面での協力を行うことができるようになる。
しかし、この内容だけではUniswap DAOが300万UNIトークンもが拠出されようと議論されているのか理解できないだろう。
では、なぜEkuboが300万UNIトークンを拠出する温度チェック投票で賛成票が6割にもなったのか?
🦄元UniswapエンジニアでEkuboファウンダーのMoody氏とは?
そもそもUniswap V4はまだローンチされていない。なぜ、StarknetのEkuboで先に展開しようとされてるのか?
それは、ファウンダーであるMoody氏の経歴に関係する。ムーディ氏は、元Uniswapのエンジニアリーダーを勤めていた人物なのだ。
彼は、2020年4月にUniswap Labsの5人目の社員としてジョインした。2023年5月の退職までに、Uniswapインタフェースの大部分の作成、トークンリストを作りV2とV3の最初のスワップルーティングアルゴリズムを構築し、V3のコードのおよそ半分にコミット。最終的にUniswap V4の設計を主導していたのだ。
Uniswapといえば、業界をリードするDEXとして広く認識されており、Uniswapから新たな革新的機能がリリースされる→コピーされて広まるということをDeFiでは繰り返している。PancakeSwapでさえ、もともとUniswapのコピーだ。
そんなムーディがUniswapを離れた理由は、EVM互換性ではなくStarkWareの技術ビジョンやスループットに最適したZKロールアップに対する技術信頼からだそう。
Ekuboは準備から3ヶ月でローンチされ、StarknetのAVNUやFibrousなどのDEXを統合し、今ではStarknetではメジャーウォレットであるArgentとも提携している。
Uniswap V4の根幹を作り出した彼だからこそ、Ekuboは驚異的なスピードで成長し、まだUniswapでさえ提供していないV4の設計思想を取り込むことができ、先んじて機能をローンチしようとしているのである。
🗳️EkuboがUniswap DAOに提案した目的
300万UNIの目的は、Ekuboの開発とUniswapへの貢献のためにEkubo Inc.を運営継続することに使われ、主にエンジニアの人件費、コントラクト監査、法務サポートに活用される。
UNIトークンはEkubo Inc.のCEOの裁量により上記のコストに対して利用され、フォーラムを通じて進捗状況を半年ごとに報告するとしている。
提案の概要は以上。その目的は、EkuboとUniのガバナンストークンのスワップだとも解釈できる。
まだ発行もされていない、価格の付いていないトークンのスワップがなぜ成り立つのか?実は、ArgentとStarknetが提携しStarknetエコシステムのベンチャーに投資するhito studiosというファンドが立ち上げられている。
Ekuboのトークンバリエーション(ガバナンストークンの価値)は、このファンドの投資を参考に算出されていると思われる。
💡今後の可能性と懸念
Uniswap DAOでこの可決が正式に通ったら、80%をEkuboが管理しこれは将来ユーザーに配布されEkubo DAOなどに活用される可能性がある。
今回賛成投票が多かった投票は、温度チェックと呼ばれ正式なものではない。そして、この温度チェックで最も大きな票を投じてるjessewldn.ethは賛成に800万UNIで投票している。
彼はフォーラムで、今回のEkuboの提案だけでは具体性がないので詳細な内容を求めている。UniswapのCairoでの構築にかかるコストを考えればEkuboがStarknet上のある意味オフィシャルなUniswap V4とするアイデアは高く評価している。
今回の温度チェックでは賛成票と反対に差はあれど、最も大きな賛成を投じてるjesswldn.ethが反対に回る可能性も十分にあり、次の投票では「反対」される可能性も十分にあると言える。
また、フォーラムでWintermuteがEkuboを評価額6000万ドルとしていることが支持できないといっている。
L2BEATも反対した意見を述べているし、内容はその通りな気がする。
また、懸念点として、知的財産の共有という点がる。EkuboはUniswap V4ライセンスの内容を変更させ、Starknet上での無制限の使用に対する Ekubo, Inc. への付与が含まれるとするつもりだ。
UniswapやStarknetエコシステムに与える影響力は大きいだけに、この投票に関しては動向をチェックすると非常に面白いと思う。
Ekubo Inc. と Uniswap コミュニティ間のコードの共有に関する問題が軽減されると言っている。
これはお互いにとって本当に良いことなのか?
では、メリットの部分はどうだろう?これはぼくの考察を踏まえて以下にまとめる。
✍️考察と所感
まず、UniswapがStarknetエコシステムに間接的に影響力を持つことをサポートするという意味では良い提案だと思う。
EkuboによるUniswap V4への改善など、どちらにも開発面でメリットが具体的にあれば結果的に良い成果がもたらされる可能性に期待したいとは思う。
しかし、WintermuteやL2BEATが指摘しているように、300万UNIトークンという額にはもっと具体的な算出根拠とその根拠に対するUniswap DAOでの議論が必要だという点にぼくは賛成である。
Starknetの未来を信じる投資家に評価されたバリエーションを根拠にするのは、やや偏りすぎた評価であり納得し難いのではないかと考えている。
この点について、次回のラウンドで少しは情報があると賛成票が入りやすくなるかもしれない。
また、これはEkuboが行うようなアプローチ以外に、NethermindというプロジェクトがWarpというSolidityをCairoに変換するツールを開発している。
これはUniswap DAOによって承認され、現在は既にUniswap V3がStarknetに展開している状態だ。300万UNIトークンを過大評価だとして一蹴したとしてもStarknet展開への道は残っている。
しかし、その場合EkuboからUniswapへの協力は得られないし、もし性能がEkuboがUniswapを勝るようであればStarknetでの存在感を奪われる懸念もある。Uniswap としては難しい判断だろう。
個人的には拠出するUNIトークンを減額する方向で修正されれば、提案は可決される可能性があるのではないかと思っている。そうでもなければ否決されて終わりかも。
そうなれば、EkuboとUniswapは、Uniswap V4のコードソースライセンスに関して争うことになるかも知れない。
いずれにしても、Ekubo自体のポテンシャルは高いし、今後Starknetエコシステムの代表的なDEXになる可能性はある。ローンチ間もないが、既にTVLは200万ドルを超えている。
StarknetというNon-EVM(Cairoじゃないとアプリが動かない)という経済圏は、高い性能をもっているもののアプリケーションのオンボーディングが遅れている。Starknetエコシステムが成長するためにも資金の流入は必要で、そのプラットフォームをEkuboが担える可能性はある。
何か情報があればXで共有するようにするので、興味がある方はフォローしていただけると嬉しい。
本日は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。もしこの記事を気に入っていただけたら「いいね・Xでのシェア」を頂けたらとても嬉しいです。質問や感想はコメントでお願いします。
🐦コミュニティ
Xでいただいたリプライや感想を紹介しています。読者の声が、ニュースレター継続の最大の原動力です。
免責事項
このニュースレターは、教育目的の情報提供を主旨としており、金融に関するアドバイスではありません。ご自身での調査やデューデリジェンスが必要です。